スポンサーサイト

--.--.--.--.--:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

マタハラ

2016.09.08.Thu.20:26
社労士

労働基準広報の2016年1月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


ですが、マタハラについての下記の質問に答えています。


 
 
  製造業で、人事労務担当課長をしております。
  新聞に厚生労働省がマタハラ(妊娠や出産をめぐり不利益な扱いや嫌がらせを受ける「マタニティーハラスメント」)に関する調査 結果が公表され、マタハラ防止へ法改正することを検討しているという記事がありました。最近、当社でもマタハラ発言を上司が したということで問題となった事案があり、社員にマタハラ防止についての教育をしなければならないかと思っていたところです。
 まず、平成26年のマタハラに関する最高裁判決を例にとって、社内教育をしようと思っております。
  そこで、この判例のポイントと判例を踏まえて企業が留意すべき点をご教授願えればと思います。



  今回は、マタハラに関する最高裁判決とその意義の箇所について紹介します。


*マタハラに関する最高裁判決


社労士 

 ご質問でおっしゃっている判決は、広島中央保健生協(C生協病院)事件の最高裁判決(最一小判平26.10.23労働判例1100号5頁)のことですね。この判決はどんな判決だったのですか?


弁護士 


 妊娠した労働者が軽易業務への転換の請求をした場合、使用者は他の軽易な業務に転換させなければならない(労基法65条3項)のですが、この軽易業務への転換の際に副主任を免じたことを、使用者の裁量権を逸脱してはおらず、均等法が禁止する不利益な取扱いに該当しないとした広島高裁の判決(平24.7.19労働判例1100号15頁)を破棄して、差戻した判決です。


社労士 


どのような事案だったのですか?



弁護士 

 
 保健生協の運営する病院に理学療法士として勤務し、副主任の地位にあった女性が、妊娠して労基法65条3項による「軽易な業務」への転換の請求をし、訪問看護ステーションから病院のリハビリ科(病院内でリハビリを業務を行う)に異動となったものの、副主任を免ぜられ(管理職ではなり、副主任手当もなくなる)て勤務し、その後産前産後の休業、育児休業を取得した後、訪問看護ステーション(軽易業務前の職場)に職場復帰をした際にはこの労働者よりも経験年数の少ない副主任が既にいて、副主任に復帰することなく、かつての部下であった副主任の下で勤務することになったという事実関係です。そこで、当該労働者が、副主任を免ぜられたこと及び職場復帰した際に副主任に復帰しなかったこと均等法9条3項に違反するとして、差額賃金及び損害賠償(慰謝料を含む)を請求した事件です。均等法9条3項が正面から問題となった事件です。



社労士 

 一審の広島地裁判決(平24.2.23労働判例1100号18頁)も控訴審の広島高裁判決も、軽易業務への転換の際に副主任を免じたこと、出産休業及び育児休業を経て復職する際に副主任に戻さなかったことを、人事権の範囲内で行われたもので、均等法には違反しないと判断していましたがこの高裁の判断を否定したのですね。



弁護士 

 最高裁は、広島高裁の判決(平24.7.19労働判例1100号15頁)を破棄して、差戻しました。




*判決の意義


社労士 

 この判決の意義はどのようなところにありますか?



弁護士

 1つには、均等法9条3項の民事的効力を肯定したこと、2つには、均等法9条3項の判断をする上での枠組みを示したことです。
 

社労士 

 均等法9条3項に民事的効力があって、これに反する法律行為が無効となることは、従前から言われていたことですね。4


弁護士 

 当然のことですが、この判決は、最高裁が均等法9条3項の規定が強行規定であることを確認した初めての判決です。最高裁は、「均等法の規定の文言や趣旨等に鑑み、同法9条3項の規定は、・・・これに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり、女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業または軽易作業への転換等を理由として解雇その他の不利益取扱いをすることは、同項に違反するものとして違法であり、無効であるというべきである。」と判断しています。
 これは、均等法にとどまらず、育児休業や介護休業の申出または取得を理由とする不利益取扱いの禁止(育介法10条、16条の4)、育児又は介護を理由とする所定労働時間の短縮等の措置の申出またはその措置を理由とする不利益取扱いの禁止(育介法23条の2)も同様に考えられると思います。



社労士 

 妊娠や出産等を理由とする不利益取扱いについては因果関係が問題となりますね。解雇や降格などの不利益取扱いがなされた時期と妊娠や出産、産前産後休業後の復帰時、育児休業復帰時等と時期は重なっているのですが、使用者が不利益処分をした理由として労働者事情とか会社の業務上の必要性を主張することもありますね(今川学園木の実幼稚園事件、大阪地堺支判平14.3.13労働判例828号59頁。当該解雇は無効と判断された)。この点について、最高裁判決はどのように判断したのですが?



弁護士 

 その点がこの判決で重要なところと思います。
 降格についての判断ですが、「一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、・・・女性労働者につき妊娠中の軽易作業への転換を契機として降格させる事業主の措置は、原則として同項(注 均等法9条3項のこと)の禁止する取扱いにあたるものと解されるが」、①「当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」又は②「事業主において降格の措置をとることなく軽易業務に転換をさせるとことに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって」、その業務上の必要性の内容や程度及び労働者に有利または不利な影響の内容や程度に照らして「上記措置につき同項の趣旨及び目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」には、禁止される不利益取扱いには当たらないと判断しています。



社労士

さきほどの因果関係の問題ですね。



弁護士
 
 そうです。均等法9条3項の因果関係を厳密に考えると、均等法9条3項に違反する降格であるとの立証はなかなか難しいのです。そこで、まず、女性労働者につき妊娠中の軽易作業への転換を「契機として」降格させる事業主の措置は原則として均等法9条3項で禁止されるものとし、例外として①合理的理由の客観的に存在する承諾のある場合、②業務上の必要性があり、しかも実質的に9条3項の趣旨目的に反しないと認められる「特段の事情」が存在するときには、禁止される降格ではないとしているのです。原則として違法であり、例外的に適法となる場合が2つあるというのですから、妊娠中の軽易作業への転換を「契機として」降格させたことを労働者が立証すれば、不利益な取り扱いが許容される事情にあることは、使用者の立証責任ということになります。



社労士 
 
 この事件では、軽易作業への転換にあたっての降格を労働者は承諾していなかったのですね。



弁護士 

 最高裁が控訴審の事実認定をまとめた部分では、「病院の事務長を通じて、上告人に対し、手続上の過誤により・・・異動の際に副主任を免ずる旨の辞令を発することを失念していたと説明し、その後、リハビリ科の科長を通じて、上告人に再度その旨を説明して、副主任を免ずることについてその時点では渋々ながらも上告人の了解を得た。」とあります。広島高裁は、労働者は同意していたと判断したのですが、最高裁は、単なる承諾では足りず、「自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的理由が客観的に存在する」ことが必要であるとしています。



社労士 

 具体的判断はどうだったのですか?



弁護士 

 労働者がどの程度業務上の負担の軽減が図られたのか明らかではない一方で、管理職から非管理職に変更され管理職手当の支給を受けられないという不利益を受けていること、本件で副主任を免ずるという降格が軽易業務期間中の一時的なものではなくその期間経過後も副主任に復帰することを予定していないものであったのに、その旨の説明を受けおらず、労働者の意に反するものであったことから、「自由な意思に基づいて降格を承諾したと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するということはできない」と判断しています。



社労士 

 使用者にとっては、降格を強引に承諾させても均等法9条3項に違反する降格となるということですね。



弁護士 

 そうですね。特に、降格がどのような性格のものであるのかを労働者に丁寧に説明した上で承諾を得る必要がありますね。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



スポンサーサイト

無期転換ルールの特例②

2015.06.27.Sat.23:39
社労士

 労働基準広報の2015年7月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で11回となります。今回は、無期転換ルールの特例をめぐる質問に答えています。

 質問は、以下の3問です。

① 会社で、人事労務担当の部署におります。当社は、有期雇用労働者の比率が高く、さらにその中に高齢者が多くおりますので、労務管理には何かと気を使っております。
労働契約法の改正により「無期転換ルール」が平成25年4月から施行されていますが、当社では正社員(無期雇用)の定年を60歳とし、その後は嘱託社員として1年の有期雇用にして65歳まで更新しております。また、65歳を超えても本人が継続することを希望し、その人の能力やこれまでの勤務状況を見て会社が大丈夫だと判断する場合には、有期雇用を更新しております。ただ、65歳を超えると、通算5年を超えることになりますので、無期転換申込権が当該労働者に発生することになります。そうすると、労務管理が煩雑になることが予想され、困っておりました。この度、無期転換ルールの特例に継続雇用の高齢者が対象になったと聞いております。これにより労務管理もやりやすくなると期待しております。この特例についてのポイントと利用する際に気を付けなければならないことを教えて下さい。

② 当社は、有期特措法の継続雇用の高齢者の特例の計画認定の申請を検討しています。その場合は、第二種計画認定の申請書を作成して、労働局に提出しなければならないのですが、初めてのことなので、すんなり認定してもらえる申請書を作成できるか心配しています。第二種計画認定申請書を作成・提出する際に気を付けなければならないことを教えて下さい。

③ 当社は、正社員(無期雇用)を60歳定年として、その後は本人の希望があれば1年の有期の嘱託社員として、65才までは契約を更新しております。その後も本人の希望があれば、その人の労働能力を見て、契約を更新していましたが、平成25年4月に改正労働契約法は施行され、「無期転換ルール」ができたため、無期転換申込権を行使して無期雇用となる者が出てくることが予想されました。そうすると65歳を超えた者が無期雇用になり、容易に解雇もできなくなるため、やむなくこのような者に対して、68歳で第二の定年とするという就業規則を作成しました。ただ、高齢者の労働能力は個人差が著しく中には、70歳を超えても働いて欲しい人もおります。有期特措法では、第2種計画の認定を受ければ、この個人差を考慮して雇用の継続の可否を判断することができますので、第二定年を廃止する内容で就業規則を変更したいと思います。この就業規則の変更について、就業規則の不利益変更の点で問題にならないかご教授ください。


今回は、③で第二定年を規定した就業規則の変更等の問題について検討した箇所を紹介することにします。



*第二定年


弁護士

 「第二定年」の問題が生ずるのはどんな場合ですか?


社労士 

 労働者が一度定年退職して、高年法による雇用継続措置として有期労働契約を締結してこの有期労働契約が通算5年を超えて継続した場合に、労働者が無期転換申込権を行使して無期労働契約となったというケースです。ご質問の会社も、無期雇用になった場合を想定して規定を定めています。


弁護士  

就業規則に定められた第二定年を廃止することは、就業規則による労働条件の不利益変更ではないと考えられます。第二定年は、その年齢に達した場合には一律に労働契約を終了するということですので、当該規定を削除等してその制度を廃止することは、「その年齢に達しても当然には労働契約終了とはならない」という内容の就業規則にするということになります。つまり、第二定年の年齢となった労働者にもそれ以降の継続雇用が可能となることですから、労働者にとって有利な変更です。第二定年制度を廃止することは就業規則の変更ですが、労働者の同意(労契法8条)が得られるでしょうし、同意の有無にかかわらず就業規則の最低基準効(労契法12条)が働きます。



*労契法第19条の適用と上限年齢


社労士 

 なお、特例の認定を受けて、高齢労働者の能力を見て雇い止めも個別の高齢労働者ごとにできることになりますが、その場合でも注意しなければならないのは、雇止め法理(労契法19条)は適用されるということです。


弁護士  

 特例の認定を受けても、雇止めには客観的合理的理由と社会的相当性を必要としますので、契約期間満了時に使用者が自由に更新拒絶をできるようになるわけではありません。今回の継続雇用高年齢者の特例は、無期転換申込権を定める労契法18条の特例ですので、19条はそのまま適用されるのです。


社労士  

 では、特例の認定を受けた場合にも、更新の上限年齢を定めることは可能ですか?例えば、60歳が定年であるとして、定年後の継続雇用措置として1年間の有期労働契約を締結するが、上限を68歳までとした場合です。


弁護士  

 そのような規定の下で、会社の経済的事情あるいは労働者の体力や能力が低下しているという事情のない限りは68歳までは更新する取扱いであったというような場合には、多くの場合には、68歳まで雇用継続の合理的期待があると判断されるでしょう。トーホーサッシ事件(福岡地決平23.7.13労働判例1031号5頁)は、労働者の定年後は再雇用期間を6か月ごとの更新として雇用継続は最大65歳誕生日の前日までとするとの労働組合との確認書(企業外組合との間の当該労働者についての労働協約)の締結後に、従業員代表との間で定年後に雇用の継続をするかどうかの選別基準が定められたというケースで、当該労働者には65歳誕生日前日までの雇用継続の合理的期待があると判断され、当該労働者の就労状況がこれまでに比べて大きく衰えたとか経営状況が大きく変わったなどの事情もなく、雇止めに合理的な理由はないと判断されたものです(なお、この事件は、労使協定による継続雇用の選別基準の設定が認められていた時期の事例です)。この判例の理屈では、例えば、継続雇用の上限を68歳までと定めて実際に本人の希望や不都合のない限りは多くの労働者がその上限年齢まで継続雇用されていたという場合には、それまでの間に更新拒絶をするには、体力や能力の顕著な衰えとか会社の経営状況の悪化というような「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」が必要でしょう。


社労士

 65歳までの継続雇用措置は高年齢者雇用確保措置の一つとして高年法上に規定されていますので、実際上は有期雇用の更新で65歳まで就労することが多いでしょうが、それを超えても就労する能力と体力をもっている労働者も、そのような労働者を必要とする使用者もいます。しかし、65歳を超えて就労する体力と能力を維持している労働者ばかりではありません。そこで、定年後には高年法に従って有期雇用を更新して65歳まで就労させ、さらに体力と能力や会社の経営状況によって個別的に判断するという制度も可能ですか?


弁護士 

 そのような制度も可能です。ただ、その場合でも労契法19条の雇止め法理が働くことがあります。65歳を超えた場合には個別的事情によって判断するという制度であっても、体力や能力が衰えておらず本人が継続雇用を希望する場合には更新がされていたという実態があれば、雇用の継続に合理的期待があると判断される場合も多いでしょう。しかし、65歳を超えて更新される労働者も相当数いたが希望しても更新されない労働者も相当数いて、「君はいつまでもいてくれよな」などという雇用継続の合理的期待をいだかせる言動もなかったとなれば、雇止め法理(労契法19条)の適用がないでしょう。


社労士 

 65歳を超える場合有期労働契約を更新するかどうかについて、体力や能力を個別的に判断するという制度であり、実際にそのように行われている場合には、雇用継続の合理的期待があるとは認められにくいということですね。


弁護士 

 雇用の継続への合理的期待があるとされる場合でも、体力や能力が低下したとか、会社の経営上人員整理をしなければならず、再雇用労働者を継続して雇用する余地がなくなったというような場合には、更新拒絶の客観的合理的理由と相当性があると判断されることが多いと思います。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

無期転換ルールの特例①

2015.06.27.Sat.23:17
社労士

 労働基準広報の2015年6月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で10回目となります。今回は、無期転換ルールの特例をめぐる質問に答えています。

 質問は、以下の2問です。

① 会社で、人事労務担当の部署におります。
労働契約法の改正により「無期転換ルール」が平成25年4月から施行されていますが、このルールの特例がいくつか設けられたと聞いております。「無期転換ルール」の施行は平成25年4月からですが、まだあまり時間がたっていないうちに特例が次々と出されたという印象を持っています。この特例を追いかけるのは結構大変です。現在までに設けられた特例についてその経過及びポイントを教えて下さい。

② 当社は、有期特措法の高度専門職に関する特例の計画認定の申請を検討しています。そこで、まず、高度専門職の特例についてご教授ください。また、労務管理上気を付けなければならないことも併せてご教授ください。

今回は、①で無期転換ルールの特例の種類と規定された経過について検討した箇所を紹介することにします。


*無期転換ルールの特例制定の経過

社労士  

 ご質問にあるように労働契約法の改正により「無期転換ルール」が平成25年4月から施行されていますが、平成25年12月13日に、議員立法で成立した「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(以下、この改正後のそれぞれの法律を「研究開発強化法」及び「任期法」という。)で規定する「大学等及び研究開発法人の研究者、教員等 に対する特例(以下、「大学特例」という。)が公布され、平成26年4月1日より施行されています。この特例を設けたのは、研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等の観点からとされています。      
  この大学特例は大学や研究機関と有期労働契約を締結した労働者、あるいは大学や研究機関と共同で行う研究開発に専ら従事する労働者が使用者(大学や研究機関には限られない)と有期労働契約を締結した場合に限定されていましたが、さらに、今度は平成26年11月28日に「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以下「有期特措法」という。)が公布され、本年4月1日から施行されています。この特例は、専門的知識等を有する有期雇用労働者等の能力の維持向上及び活用を通じ、その能力の有効な発揮と、活力ある社会の実現を目指す観点からとされています。


弁護士  

  確かに、平成25年4月に施行されてから短い期間でその特例ができていますね。現実に無期転換ルールが適用される事例が生ずるのは平成30年4月以降の場合が多いのに、大学特例ができたのは一部の大学で1年を契約期間とする非常勤講師を5年で無期転換申込権を発生させないために色々な動きをするところが出てきたということも関係がありそうですね。有期特措法にしても、このような特例を作るのであれば、本来は平成24年8月の労働契約法改正の際に議論されていてもおかしくなかった点ですね。


*無期転換ルール

社労士  

 ここで、無期転換ルールですが、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働  者の雇用の安定を図る観点から平成24年8月の労働契約法改正により定められたものです。内容は、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換するというものです(労働契約法第18条第1項)。


*大学等及び研究開発法人の研究者、教員等 に対する特例


弁護士   

 特例の第1として、研究開発強化法及び任期法による大学特例では、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等の特例の対象者については無期転換申込権発生までの期間が10年となります。同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で10年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換するというものです(第2図参照)。これは、労働契約法の無期転換申込権発生の要件としての有期労働契約の通算5年を、10年に延長したものです。しかし、これで「研究開発能力の強化及び教育研究の活性化」が図れるのか、多少疑問もあります。1年ごとに研究成果を検証して労働契約の更新をするかどうかを検討し成果が出れば契約期間満了で雇止めをしようとしていたところ、5年経過時にはその成果があと少しで出そうだけれど、さらにその研究者の雇用を継続すれば無期労働契約転換申込権が発生するために、雇止めの方向に働く事態を防止するために10年としたとも考えられます。



*特例の対象者


社労士  

 この特例の対象者は、以下のとおりです。①~④は研究開発強化法第15条の2第1項、⑤については任期法第7条第1項に規定されています。
① 科学技術に関する研究者などであって大学等を設置する者又は研究開発法人との間で有期労働契約を締結したもの
② 研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。 以下「運営管理に係る業務」という。)に従事する者であって大学等を設置する者又は研究開発法人との間で有期労働契約を締結したもの
③ 大学等、研究開発法人及び試験研究機関等以外の者が大学等、研究開発法人又は試験研究機関等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う研究開発等(以下「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者などであって当該大学等、研究開発法人又は試験研究機関等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
④ 共同研究開発等に係る運営管理に係る業務に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う大学等、研究開発法人又は試験研究機関等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
⑤大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づく任期の定めがある労働契約を締結した教員等


弁護士   

 この対象をよく見ると、大学や研究開発法人に有期雇用される研究職の労働者だけではなく、民間での研究機関に有期雇用される労働者でもこれにあたる場合もあるのですね。


社労士   

 そうですね。③④は、大学や研究開発法人と共同研究をする民間企業に有期雇用されている労働者が対象です。しかし、大学や研究開発法人と「共同研究開発等の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者など」、「共同研究開発等に係る運営管理に係る業務に専ら従事する者」に限定されています。従って、民間企業の研究所に勤務する労働者が自分の所属する研究所の業務の傍ら大学や研究開発法人との共同研究をしているといった場合には、この特例にあたりません。研究者のほかに、「共同研究開発等に係る運営管理に係る業務」を行う労働者もこの特例にあたることがありますが、それは「専門的知識と能力を必要とするもの」に限られていますので、範囲はごく限られてくると思います。


弁護士  

 この特例の適用対象となると、1年ごとに期間を定めた労働契約を更新して11年目に入った場合にようやく無期転換申込権が発生するということなのですね。


社労士  

そうです。通常の「通算5年」が特例で「通算10年」となったのですから、通算の仕方やクーリング期間の取扱いについては、通常の場合と同じです。



*有期特措法による特例


弁護士   

 特例の第2として有期特措法による特例があります。
 これは、さらに、① 専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」という。)と、 ② 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」という。)があります。


社労士  

 これは、平成25年12月13日に公布された国家戦略特別区域法附則第2条で、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進を図る観点から、高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者等について、無期転換申込権発生までの期間の在り方等について検討を行って所要の法案の提出を目指す旨が規定されたことを受けて、策定されたものです。この特例は、高度専門職と継続雇用の高齢者を対象として、労働契約法18条の無期転換ルールの特別措置として制定された法律です。その趣旨は、「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者が、その能力を有効に発揮し、活力ある社会を実現できるよう、これらの有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する特別の措置が行われる場合に、無期転換ルールに関する特例を設けるものである」とされています(平成27年3月18日基発0318第1号)。


弁護士  

 「有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する特別の措置が行われる場合」に特例が適用となるということですね。ここが一つのポイントになりますね。



*指針


社労士  

 先ほど説明した通達の日付と同じ平成27年3月18日に、「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法施行規則」(労働省令35号)が公布され、有期特措法3条に基づく「事業主が行う特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置に関する基本的な指針」(厚生労働省告示69号)が出されています。この指針によれば、高度専門職については教育訓練に係る休暇の付与、教育訓練に係る時間確保の措置、教育訓練に係る費用の助成などの措置、継続雇用高齢者については高年齢者雇用推進者の選任、配置・職務・職場環境に関する配慮等の措置があげられています。


弁護士   

 この特別措置は、そのような雇用管理に関する特別な措置をとる代わりに、有期雇用労働者が通算5年を超えて同一の使用者に雇用された場合に発生する労働契約法18条の無期転換申込権の発生を、延長するものですね。


社労士  

 そうともいえます。高度専門職についてはその専門的知識を必要とする業務(5年を超える一定期間内に完了することが予定されているもの)に就いている間(上限は10年)は無期転換申込権を発生しないこととし、継続雇用の高齢者に就いては定年後引き続き雇用されている期間は無期転換申込権を発生しないこととしています。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

L館事件最高裁判決(セクハラ事案)

2015.06.27.Sat.22:42
社労士

 労働基準広報の2015年5月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で9回目となります。今回は、セクハラ発言による降格に係る最高裁判決をめぐる質問に答えています。

 質問は、以下のとおりです。

人事労務担当役員です。 
わが社は、以前セクハラをした労働者を処分したことがあります。その時行った処分を不服とする労働者ともめたことがありました。それ以来、セクハラ関連については、国や判例の動向を注意しています。この度、セクハラ発言を行った労働者を懲戒処分と降格にした事案の妥当性に関する注目すべき判決がでたと聞いております。1審、2審と判断が異なり、最高裁が最終判断したということですが、それぞれのポイントをご教授ください。またこの判例を踏まえて会社が、注意しなければならない事項をご教授ください。


今回は、事件の概要と1審・控訴審・最高裁の判断の箇所を紹介することにします。

*L館事件最高裁判決


社労士  

L館事件(最1小判平27.2.26裁判所ウェブサイト掲載)では、セクハラの行為者への懲戒処分と降格処分の効力が争われました。セクハラ行為をした労働者(管理職)2人を出勤停止30日と10日とし、この懲戒処分を理由として、資格等級を課長代理職(M0)から係長職(S2)に1等級降格したという事件でした。


*1審・控訴審・最高裁の判断


弁護士

1審(大阪地判平25.9.6労働判例1099号53頁)でも控訴審(大阪高判平26.3.28労働判例1099号33頁)でも、セクハラ行為があり、懲戒事由には該当するとの判断をしたのですが、1審は処分も相当で降格も有効であると判断したのに対し、控訴審ではこの処分は重過ぎて社会通念上相当性があるとは認められず無効であり、これを理由とする降格も無効であると判断しました。最高裁は、控訴審判決の事実認定を前提としながら、懲戒処分と降格処分を有効と判断しました。


*事件の事実関係


社労士  

 この事件は、女性労働者が不愉快になるようなセクハラ発言を繰り返したという、いわゆる「環境型セクハラ」にあたるものですね。事実関係はどのようなものだったのですか?


弁護士  

 まず、会社Yは、大阪市が出資する第3セクターとして水族館とこれに隣接する商業施設の運営等を行っている会社で、処分をされた労働者2名のうち1名X1は営業部サービスチームのマネージャーの地位にあり、資格等級はM0(課長代理)の等級です。もう1人のX2は、営業部課長代理の地位にあり、資格等級ではやはりM0の等級です。両方とも営業部に所属し、X1がサービスチームの責任者、X2がサービスチームの課長代理の1人でした。営業部の事務室では、合計20数名の労働者が就労しており、今回被害者となった女性労働者Aは売上管理等の担当で、営業部事務室の一部を壁で仕切った精算室で主任C(男性)とともに勤務していました。また、女性労働者Bは、拾得物担当で、営業部の事務室内に勤務していました。AはD社から派遣されている派遣労働者、BはY会社の営業部事務室内でD社が請け負った作業をするD社の従業員です。つまり、A、Bともに、職場における人間関係やD社の立場を考えると、セクハラ行為があっても抗議や被害の申告をしづらい立場にあったということができます。
他方、Y会社の従業員の過半数は女性で、来館者も約6割が女性であり、Y会社は関原の防止等に関する研修会を実施してこれに全従業員の参加を義務付け、平成22年11月1日には「セクシャルハラスメントは許しません!!」と題する文書(以下「セクハラ禁止文書」という)を作成して従業員に配布し、職場に掲示するなどの取り組みを行っていました。X1、X2ともに、研修を受けただけでなく、管理職としてセクハラ防止のために部下職位を指導すべき立場にあったと判断されています。なお、X2は過去に女性従業員に対する言動について苦情が出されていて、営業部に異動になった当初、上司(副部長)から女性従業員に対する言動に気をつけるよう注意をされていました。


*会社の対応


社労士  

 会社としては、セクハラ防止のためになすべきことをなしていたといえますね。


弁護士  

それに、Y会社の事後対応も妥当なものだったと思います。AがAとBがY会社の営業部副部長に相談し、営業部副部長はABの氏名を明らかにすることなくセクハラ相談窓口担当者に相談し、担当者は直接被害者から話を聞かせてほしいと副部長に告げて調査を開始して事情を聴取してメモを作成するのを依頼したのちにABの派遣元・請負先であるD社の派遣会社担当者を訪問して調査をしています。これも妥当なところと思います。


*セクハラ発言


社労士  

 この事件では、身体を触ったり、性的関係を求めたりするような行為はなかったということですが、そうすると問題はセクハラ発言ということになりますね。


弁護士  

 そうです。また、「対価型」もありません。「性的な言動」のなかでも、言葉によるものです。控訴審判決では、Xらの行動について、「いずれもAとは仲が良く、本件各懲戒該当行為のような言動もAから許されていると勘違いをした結果、それらの行為に及んだものと認められる」と判断されていますが、言葉の内容的にはけっこうきわどいものでした。その多くは、Aが1人で精算室いるときにAに対して述べられています。期間は1年余にわたっています。X1の発言については、「きわめて露骨で卑猥な発言等を繰り返すなどした」と評価されています。X2の発言についても、「従業員Aの年齢や従業員Aらがいまだ結婚をしていないことなどを殊更に取り上げて著しく侮蔑的ないい下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し」たと評価されています。


社労士  

具体的にはどのような発言だったのですか?


弁護士 

 最高裁は、判決文の別表で、控訴審で事実認定されたXらの発言を取り出していますが、X1の発言として、主なものをあげると、次のようなものです。
    「(X1の)不貞相手の年齢や職業の話をし、不貞相手とその夫との間の性生活の話をした」
    「『俺のん、でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ。』
    『(X1)の夫婦間はもう何年もセックスレスやねん。』『でも俺の性欲は年々増すねん。なんでやろうな。』『でも家庭サービスはきちんとやってるねん』『切り替えはしているから。』と言った。」
    「不貞相手が自動車で迎えに来ていたという話をする中で、『この前、カー何々してん』と言い、従業員Aに『何々』のところをわざと言わせようとした。」
    X2の発言の主なものとしては、次のような発言です。
  「従業員Aに対し、『いくつになったん。』、『もうそんな歳になったん。結婚も線でこんなところで何してんの。親なくで。』と言った。」
    「従業員Aに対し、C(精算室の就任で男性)もいた精算室内で、『30歳になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから、仕事やめられていないないなあ。うらやましいわ。』と言った。
    「従業員Aに対し、『毎月、収入どれくらい。時給いくらなん。社員はもっとあるで。』、『お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。』・・・などと繰り返し言った。」
    「従業員A及び従業員Bに対し、具体的な男性従業員の名前を複数挙げて、『この中で誰か1人と絶対結婚しなあかんとしたら、誰を選ぶ。』、『地球に2人しかいなかったらどうする。』と聞いた。」


*控訴審の判断の理由


社労士  

 これは環境型セクハラにあたりますね。言葉のセクハラとしても重い部類ではないでしょうか。X1の発言は露骨な性的発言ですし、X2の発言は「女性は結婚をすべきもの」との価値観を押し付けているものです。どうして控訴審では懲戒処分が無効と判断されたのですか?


弁護士  

 控訴審でも、これらの行為は懲戒事由にあたると判断されたのですが、懲戒解雇の次に重い出勤停止処分では処分が重すぎるという判断です。その理由としては、①Xらが従業員Aから明確な拒否の姿勢を示されておらず、上記のような言動も従業員Aから許されていると誤信していたこと(「誤信」)、②Xらが懲戒を受ける前にセクハラを理由とする懲戒に関するY会社の具体的な方針を認識する機会がなかったこと(「方針の認識」)、③上記の行為(他の従業員の面前で行われた行為もある)について事前に警告や注意等を受けていなかったこと(「事前警告」)などからです。


*最高裁の判断


社労士 

 明確な拒否の姿勢を示されていなかったといっても、AやBは派遣労働者や請負会社の労働者という、いわば弱い立場にあった労働者でしょう。それで明確な拒否の態度を示せなかったということも考えられますね。


弁護士  

 そうです。最高裁は、「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等をいだきながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる」と判断しています。また、本件で問題となった発言内容から見て、仮に「誤信」があったとしても、いやがるのは当然のことと考えるべき内容だと思います。「誤信」自体がおかしいとも考えられます。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

総合労働相談員にお勧めする本です。

2014.08.10.Sun.19:36
社労士

 厚生労働省では、今年度の行政運営方針において

 若者の「使い捨て」が疑われる企業等への取組については、本省において、①「労働条件相談ダイヤル(仮称)」の設置による夜間や休日における相談体制の整備、②「労働条 件相談ポータルサイト(仮称)」の設置及び③大学等における周知啓発セミナーの実施に よる法令等の情報発信を行う。 「労働条件相談ダイヤル(仮称)」で受け付けた相談や情報については、所轄の労働基 準監督署へ取り次ぎ、事案の内容に応じて監督指導等を実施するなど、必要な対応を行う。

としていますが、これはいわゆるブラック企業対策ともいえるものです。

①については委託事業となっているのですが、的確な相談が行えるように「相談マニュアル」が必要となります。今回、私もその執筆者に加えて頂いております。そして、この「相談マニュアル」つくり等の座長は、東大の水町勇一郎先生です。

  マニュアルの検討の際にも分かりやすく話されているので、今回、水町先生が書かれた「労働法第5版」(有斐閣)を読んでみました。そこで、今までの労働法の基本書に比べると、実務的だし、読みやすい内容なのでびっくりしました。


弁護士

 そうですね。私の教えている法科大学院でも水町先生の本を労働法の基本書としてる学生が多いですね。

社労士

  分かりやすいし、判例も新しいものが相当入っているので、新しく総合労働相談員になられた方が読むのに最適だと思いました。総合労働相談員の方は、勉強家の方が多く、私が企画室にいたころもみなよく勉強されていました。この本を一通り読んでから、さらにより深めていくために記載されている判例にあたり、また、他の先生の本にも目を通すというやり方がいいのではないかと思います。そういう意味では、まさに基本書として最適ではないかと思います。また、労働基準監督官にとっても労働法全体を知るための本としては最適ではなかいと思います。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****

「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著

「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


事件ファイル

労働審判

 | HOME | Next »
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。