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定額残業制についての注目すべき最高裁判例

2013.06.26.Wed.01:06
社労士
 定額残業制につきまして、昨年注目すべき最高裁判例がでましたので、今回は、それも含めて定額残業制についての判例を紹介したいと思います。

*定額残業制の意味

社労士 
 定額残業制とは、時間外労働に対する割増賃金を、労基法の定める方法によらないで一定額の手当を時間外労働に対する割増賃金相当額分として支払うものですが、今まで、判例ではどのように扱われているのですか?

*適法性

弁護士 
 時間外労働手当に代えて一定額を支払うという定額残業制も、労基法所定の計算方法による金額以上の金額を支払っていれば、適法であると考えられています(関西ソニー販売事件、大阪地判昭63.10.26労働判例530号40頁)。但し、割増賃金が本来の通常の賃金部分から明確に区別されている必要があります。


*労基法の方法で計算した割増賃金の金額の方が定額残業の金額よりも高い場合

社労士 
 では、時間外労働をたくさん行って、労基法の方法で計算した割増賃金の金額の方が定額残業の金額よりも高いという場合には、どうなるのですか?

弁護士 
 当然、労働者は差額についての割増賃金請求権をもつことになります

社労士 
 基本給には時間外労働手当を含むと合意をしても、それだけではその合意は無効ですよね。

弁護士
 そうです。基本給に時間外割増賃金を含むとの合意をしても、「割増賃金部分が法定の額を下回っているか否かが具体的に後の計算によって確認できないような方法による賃金の支払方法は同法同条(注 労基法37条)に違反するものとして無効と解するのが相当である。」(創英コンサルタント事件、大阪地判平14.5.17労働判例828号14頁)と判断され、この判断が高裁でも是認されています(大阪高判平14.5.17労働判例849号157頁。この事件で最高裁(2小)は、平15.5.30に上告棄却、上告受理申立不受理決定)。


*「毎月の基本給には、月20時間分の時間外労働手当を含む」というように合意をした場合


社労士 
 それでは、単純に「基本給の中には時間外労働手当を含む」というだけではなく、例えば、「毎月の基本給には、月20時間分の時間外労働手当を含む」というように合意をした場合はどうですか?
弁護士 
 その場合でも、時間外労働手当等の割増賃金部分と本来の通常の賃金部分が明確に区分されていることが必要です。
 小里機材事件の一審判決(東京地判昭62.1.30労働判例523号10頁)は、月15時間の時間外労働に対する割増賃金が基本給に含まれることを合意している(本来の基本給に15時間分の時間外労働割増賃金を加算して「基本給」としている)との会社の主張に対し、「仮に、月15時間の時間外労働に対する割増賃金を基本給に含める旨の合意がされたとしても、その基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされ、かつ労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されている場合にのみ、その予定割増賃金の一部または全部とすることができるものと解すべき」と判断しました。この判断は控訴審の東京高裁判決(昭62.11.30労働判例523号10頁)でも是認され、これが最高裁でも「正当として是認することができ」るとされました(最(1小)判昭63.7.14労働判例523号6頁)。

社労士 
 そのほか、判例ではどのような事案がありますか?

弁護士 
 合給制のタクシー乗務員の事件(高知県観光事件、最(2小)判平6.6.13労働判例653号12頁)では、「上告人らに支給された前記の歩合給の額が、上告人らが時間外及び深夜の労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、上告人らに対して法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難なもの」と判断されています。ここでも、割増賃金部分と本来の通常の賃金部分の区分が明確でない場合には、割増賃金を支払ったことにはならないとされています。

*最近の最高裁判決

社労士 
この問題について、昨年、最高裁の判決が出たそうですね。

弁護士 
 平成24年3月8日の第1小法廷の判決ですね。最高裁のホームページに載っています(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120308144443.pdf)。
  この事件は、基本給を月額41万円とし、1か月の労働時間合計が180時間を超えた場合にはその超えた時間について1時間当たり一定額(1時間当たり2920円)を別途支払い、月間総労働所間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり一定額(1時間当たり2920円)を控除するという合意がされているという事実関係です。会社は人材派遣会社で、労働者は派遣労働者です。この事件では、180時間以内の労働時間中の法定時間外労働がされても基本給自体が増額されることはないこと、また、「月額41万円の基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同項(注 労基法37条1項)の規定する時間外の割増賃金に当たる部分を判別することができない」ことから、これでは月額41万円の基本給の支払を受けたとしても、その支払によって、月間180時間以内の労働時間中の時間外労働に対する割増賃金を支払われたことにならず、月間180時間の中に含まれる時間外労働について、使用者は月額41万円の基本給とは別に割増賃金を支払う義務を負うと判断しています。
 この判例は、上記の高知県観光事件の最高裁判決を引用していますので、割増賃金部分と通常の賃金部分の区分を明確化することは、定額残業制の要件の一つであることを明確にしたものです。そのほか、櫻井裁判官の補足意見では、一定時間(例えば10時間分)の定額残業制をとる場合には、その旨が雇用契約上も明確にされていること、支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当額が明示されていること、さらにこの一定時間(例えば10時間)を超えて残業が行われた場合には所定支給日に別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ合意されていることが必要であるとしています




紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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事件ファイル

労働審判

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熱中症

2013.06.25.Tue.22:52
社労 
 連載している労働安全衛生広報の7月15日号、「熱中症」を取り上げています。事案は、屋外の階段の清掃作業中に熱中症を発症したというものです。そのような場合の監督署の監督の実施、是正勧告、事業者の是正報告、安全配慮義務にかかる裁判例等を解説しています。今回は、その中で、熱中症に関係する労働安全衛生法や労働安全衛生規則及び安全配慮義務の判例について紹介したいと思います。


*熱中症と労働安全衛生法規

弁護士
 まず、労働者が作業中に熱中症を発症した場合、問題となる労働安全衛生法や労働安全衛生規則の条文の説明をしましょう。

社労士
 労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を保護するために種々の義務を事業者に課していますが、そのなかには、健康に害を及ぼさない作業環境の確保の義務もあります。
 高温または低温による健康障害の防止を目的とする規制としては、労働安全衛生法22条2号があり、ここでは、「放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害」「を防止するため必要な措置を講じなければならない。」と規定されています。
 熱中症を発生させるような高温で多量の発汗を伴う有害な作業環境に対しては、労働安全衛生規則617条では、労働者に適宜摂取させるために作業場に塩や飲料水を備えなければならないとして健康障害を防止するための措置を事業者に義務付けています。これは労働安全衛生法22条に基づくもので、違反をした場合には刑罰が科せられます(119条1号、122条)。

*熱中症と安全配慮義務

社労士
 次に、安全配慮義務の点の説明に移りますが、労働の場だけではなく、学校のクラブ活動の場面で熱中症が発症したも安全配慮義務が問題となっているようですね。

弁護士
 そうですね。安全配慮義務という言葉は、もともとは労働者が使用者の指示のもとに労務を提供する過程において労働者の生命身体を危険から保護するよう配慮すべき使用者の義務という意味で用いられ(川義事件、最(3小)判昭59.4.10労働判例429号12頁)、平成19年制定の労働契約法5条に明文化されました。この安全配慮義務は労働契約に伴って使用者が負う債務で、これを履行しない場合には債務不履行となって損害賠償責任を発生させます。

 学校のクラブ活動でも熱中症(このうち症状の重いものが「熱射病」と従来は呼ばれていた)を発症して死亡する事例は、損害賠償請求がされることがありました。この場合、指導教諭の過失が問題となりました。指導教諭の過失が認められた事件として、高校の相撲部の合宿練習中に熱射病を発症して生徒が急性心不全により死亡した事例(千葉地判平6.3.6判例時報1497号108頁、控訴審 東京高判平6.10.26判例時報1555号57頁)、中学の野球部の練習の休憩時に熱中症による心不全で死亡した事例(徳島地判平5.6.25判例時報1492号128頁など、多数あります。これらの事件では、指導教諭には「練習中、部員の生命身体に危険が及ばないように配慮し、部員に何らかの異常を発見した場合には、その容態を確認し、応急措置をとり、必要に応じて医療機関に搬送すべき注意義務」があるのにこれを怠った過失があるとして、民法709条(あるいは国家賠償法1条)の「過失」があると判断されたものですこれを見ると、労働災害の場合の安全配慮義務違反による損害賠償請求とほとんど同じ内容であることがわかります。

社労士
 なるほど、安全配慮義務は、判例では労働契約関係に限らず、拡大して使われることもあるのですね。さらに、詳しい判例や「熱中症の予防の行政指導と安全配慮義務にかかる過失の評価」等の考え方も解説していますので、労働安全衛生広報7月15日号をご覧ください。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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労働審判


配転・出向・転籍

2013.06.18.Tue.23:00
社労士 
 連載している労働基準広報の7月1日号は、「配転・出向・転籍」について、その命令の根拠、要件、濫用とされる事例、判例の判断基準、判例の動向等について説明しているのですが、今回は、「出向」における労働者の同意と出向命令権の濫用についての裁判例を紹介したいと思います。

*出向とは?
社労士
 出向というのは、出向元の会社との労働契約関係を維持したまま、出向先会社の従業員となって出向先会社の指揮命令の下で働く人事異動のことです。親会社の課長が子会社の部長として出向することもありますし、親会社の技術系労働者が子会社の労働者の技術指導に当たるために子会社に出向することもあります。また、いわゆるリストラとしての出向もあります。
 出向となれば、別の会社の従業員ともなるのですから、この場合には、当然労働者の同意が必要ですね?

*労働者の同意
弁護士 
 労働者の同意が必要です。しかし、「同意」といってもどの程度の「同意」が必要かは問題があります。就業規則に、「会社は、出向を命ずることができる。」とあって、これを承知して雇用されたという場合に、見方によってはこれで「合意」(事前の包括的合意)が成立しているとも考えられるからです。

社労士
 それでは、出向をさせることがあるというだけの就業規則の出向条項だけで出向命令が出せるのですか?

*出向についての最高裁判例
弁護士 
 それではまだ出向命令は出せないでしょう。労働者の個別的な同意のない出向命令を出せるとした判例(新日本製鐵(日鐵運輸第2)事件、最(2小)判平15.4.18労働判例847号14頁)は、出向を命ずることができるという就業規則の規定のほか、「労働協約である社外勤務協定において、社外勤務の定義、出向期間、出向中の社員の地位、賃金、退職金、各種の出向手当、昇格・昇給等の査定その他処遇等に関して出向労働者の利益に配慮した詳細な規定が設けられている」という事実関係においては、労働者の個別的同意なしに、出向元会社は、出向元の「従業員としての地位を維持しながら日鐵運輸(出向先)においてその指揮監督の下に労務を提供することを命ずる本件各出向命令を発令することができるというべきである。」と判断しています。

社労士 
 出向命令を出すことができるという一般的な就業規則の条項だけではなく、出向先企業、出向中の労働条件、出向期間、復帰の際の労働条件などの具体的条項があってはじめて出向命令を出すことができるということですね

弁護士 
 そうです。先ほどの新日本製鐵事件では、社外勤務協定には出向者の給与及び賞与は出向先の定めるところによるが差額がある場合には補填するということまで定められていました。

*出向命令権の濫用

社労士 
 出向命令を出すことができる場合でも、出向命令権の濫用となる場合がありますね(労働契約法14条)。これは、どのように判断されるのですか?

弁護士  
 先ほどの最高裁判決は、①経営判断の合理性、②人選基準の合理性、③労働者のこうむる不利益、④手続の相当性、といった点から判断していますが、労働契約法14条の「必要性、対象労働者の選定にかかる事情その他事情」と実質的には同一でしょう。
 出向命令権の濫用に関して先の事件の事実関係を見ると、鉄道輸送部門を協力会社(日鐵運輸)に業務委託することとなり、鉄道輸送部門に所属していた労働者を協力会社に出向させるというもので、就業場所も就業内容も変更はなく、転居の必要性もありません。また、賃金や賞与について差額が生じた場合には補填するということですから、労働条件の低下はなさそうです。そこでこの事件では出向命令権の濫用ではないと判断されたのですが、出向後の労働条件の変化が出向者を退職に追い込みかねないものであることを理由に出向命令権の濫用であると判断された判例があります(JR東海事件、大阪地決平6.8.10労働判例658号56頁)。

社労士
 以上のほか、配転命令権の根拠、職種限定の合意の判例の動向、配転命令権の濫用と判例の判断基準、転籍における労働社の合意と判例等も解説してますので、労働基準広報の7月1日号をご覧ください.



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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