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解雇②客観的合理性と社会的相当性

2013.09.11.Wed.21:19
社労士 
 連載している労働基準広報の10月1日号は、どのような場合に使用者が労働者を解雇することができるのかの問題を解説しています。

弁護士 
 労働契約法16条に規定があり、解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、解雇権の濫用として無効とされています。この条文は、それまで判例上認められてきた解雇権濫用法理を正面から法律の規定としているもので解雇には①客観的に合理的な理由と②社会的相当性が必要であると解釈されています。

社労士
 それでは、今回は、この①客観的に合理的な理由と②社会的相当性について、解説することにしましょう。
まず、解雇理由としての「客観的に合理的な理由」にあたるのはどのようなものですか?

弁護士
 解雇事由を大別すれば、①労働者の能力や適性、②労働者の義務違反や規律違反、③経営上の必要といったものがあります。就業規則の解雇事由としても書いてあるところでしょう。①の労働能力については、例えば私傷病で勤務に耐えない状態が続いている場合だとか、職務を特定して管理職とか専門職に採用された労働者が実はその職務遂行能力がなかった場合や勤務態度不良の場合などです。②の労働者の義務違反や規律違反は、欠勤や遅刻が度重なった場合や業務命令違反の場合などです。


社労士
 就業規則にそのような解雇事由を定めておいても、それに該当するかどうかの具体的判断では制限がかかってきますね。

弁護士
 そうです。就業規則に定められている解雇事由として「労働能率が劣り、向上の見込みがないと認めたとき」にあたるかどうか争われた事件で、これに該当するためには「平均的な水準に達していないというだけでは不十分であり、著しく労働能率が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならない」と判断した判例があります(セガ・エンタープライゼス事件、東京地決平11.10.15労働判例770号34頁)。この事件で、当該労働者の人事考課は下位10%未満の順位でしたが、この人事考課は相対評価でした。相対評価であれば、下位10%の労働者は必ず存在します。これを理由に解雇できるとなれば、人事考課で下位10%に入っている労働者は常に解雇できることになってしまいます。それはないだろうというのがこの決定です。

社労士
 そうすると、就業規則にいくら厳しく解雇事由が書いてあっても、一般的に許容される水準に読み直されることになりますね。

弁護士
 そうです。それに、解雇理由があると判断された場合であっても、他の事例との比較や労働者のそれまでの勤務状況などから考えて、それで解雇するのは厳しすぎるという場合には、「社会的相当性」の観点から、その解雇が無効とされることがあります。

社労士
 その観点からの判断した判例はありますか?

弁護士
 高知放送事件の最高裁判決はそのような事例でした。こんなことを言っています。「普通解雇事由がある場合においても、使用者は常に解雇しうるものではなく、当該具体的な事情の下において、解雇に処することが著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないときには、当該解雇の意思表示は、解雇権の濫用として無効になるというべきである。」 
 この事件の事実関係としては、ラジオ局のアナウンサーが寝過して1回目は10分、2回目は5分間放送に穴をあけてしまったものです。
 最高裁は、この解雇について、就業規則所定の解雇事由に該当すると判断しました。しかし、過失によるもので悪意ないし故意によるものではないこと、通常はファックス担当者が先に起きてアナウンサーを起こすことになっていたのにファックス担当者も寝過してしまったこと、会社では早朝のニュース放送の万全を期すべき何らの措置も講じていなかったこと、放送の空白がさほど長時間ではなかったこと、平成の勤務成績も別段悪くはないこと、従前放送事故を理由に解雇された事例はなかったことなどの事実から、このアナウンサーに「解雇をもって臨むことは、いささか過酷にすぎ、合理性を欠くうらみなしとせず、必ずしも社会的に相当なものとして是認することはできないと考えられる余地がある。」と判断しています。そして、本件解雇を解雇権の濫用として無効であると判断した原審判決(高松高判昭48.12.19労働判例192号39頁)の判断を正当としています。
 この事件は、就業規則所定の解雇理由や解雇の合理的理由があるとしても、それに加えて、解雇には社会的相当性が必要であることを示しているものです

社労士
 以上のほか、整理解雇の4要件(4要素)、東洋酸素事件の東京高裁判決、あさひ保育園事件の最高裁判決、解雇理由証明書等について解説しておりますので、労働基準広報の10月1日号をご覧ください。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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労働審判

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訪問介護で発症した腰痛

2013.09.04.Wed.16:14
社労 
 連載している労働安全衛生広報の9月15日号、「訪問介護で発症した腰痛災害」を取り上げています。事案は、訪問介護をしている利用者の自宅で入浴介助をしようとして利用者をベッドから車いすへ移乗させるため抱きかかえた時に腰をひねり、腰部に負荷がかかり腰痛を発症したものです。今回は、平成25年6月18日付けで発出された「職場における腰痛予防指針」の対象となる事案なのですが、指針の内容はもとよりそれが具体的事案でどのように適用されるかについても解説しております。また、さらに、指針と安全配慮義務の関係についても解説をしてます。

弁護士
 そうですね。この事案は、業務上の災害として労災保険給付の対象となりますが、そのほか、使用者に対して民事損害賠償請求権がどうなるかが問題となります。民事損害賠償請求権の根拠となるのは、使用者の安全配慮義務違反です(労働契約法5条)が、具体的な安全配慮義務の内容は、具体的状況に応じて異なってきます。川義事件(最(3小)判昭59.4.10労働判例429号12頁)では、「もとより、使用者の右の安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものである」としています。そこで問題となるのが労働安全衛生法令及び指針等です。

社労士
 それについては、「労安衛法やその細則・指針等が定める安全衛生の基準は、安全配慮義務や注意義務の具体的内容を定めるうえで十分斟酌されるべきである。」(菅野和夫『労働法(第10版)』468頁)とされていて、労働安全衛生法や労働安全衛生規則等の規定や指針は、安全配慮義務の具体的内容となっていますね。

弁護士
 そうですね。腰痛については、先述した「職場における腰痛予防対策指針」では、適切に作業管理、作業環境管理、健康管理、労働衛生教育を実施すべきことが示されています。この指針に定められたところは、労働者が業務によって腰痛を発症しないために事業者としてなすべき一般的水準であるということができます

社労士
 そうすると、安全配慮義務違反を考えるとき、当然この指針の基準が考慮されるということですね。そういうことでは労働安全衛生法令だけでなく指針や通達も大事ですね。
 なお、労働安全衛生広報9月15日号では、このほか、指針と安全配慮義務違反に関連する判例、衛生管理者や衛生委員会についても解説しておりますので、ご覧いただければと思います。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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労災事故で工場長を逮捕

2013.09.04.Wed.12:16
社労士
 読者の方から、7月18日に労災事故で工場長が逮捕された事件について、労働基準監督署も労働安全衛生法違反で逮捕するのですかというご質問があったので、労働基準監督署での逮捕について説明したいと思います。

弁護士
 新聞によると、逮捕したのは、北大阪労働基準監督署で、事故は、女性従業員が、安全装置の取り付けのないプレス機械(圧力能力35トン)を使って金型部品を加工する際に、機械に挟まれて左手の人差し指と中指を切断するものだったということですね。

社労士
 そうですね。この事故の任意の取り調べで工場長が「従業員の注意力がなかった。責任はない。」などと容疑を否認し、捜査にも協力しなかったため証拠隠滅のおそれがあると判断されたということです。
 逮捕状発布には逮捕の理由(「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」)と逮捕の必要性(逃亡または罪障隠滅のおそれ)が要求され(刑事訴訟法199条2項)、勾留状発布には、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と罪障隠滅や逃亡をすると疑うに足りる相当な理由が必要です(刑事訴訟法207条、60条)。
 
弁護士
 労働安全衛生法違反の罪で逮捕、勾留されるのは珍しいケースですね。労働基準監督官が特別司法警察職員として労働安全衛生法違反の罪で送検する場合にも、逮捕されないで在宅で送致され、起訴される場合も在宅で起訴されることが大半でしょう。

社労士
 そうですね。でも、このように逮捕されることもあることは知っておかれた方がいいと思います。監督署に手錠があるのかと聞かれますが逮捕に必要なものですから当然あります。 また、労働基準法違反でも逮捕する場合もあり、この方が件数も多いのではないかと思います。
 実際、監督署でどのように逮捕されるのかについては、下記の「労働災害事件ファイル」にも事例がありますので、ご覧になっていただければと思います。

 
紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著

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