10月の講演
2013.10.29.Tue.16:54
社労士
私は、10月は、大学生や司法修習生に対する講演が多かったのですが、いつもは、企業の労務の担当者や安全の担当者の方相手が多いので、また違った雰囲気で話ができました。
弁護士
講演の中身はどのようなものだったのですか?
社労士
労働基準法や労働安全衛生法の履行確保ということで、主として監督署・労働局・労働基準監督官について話をしたのですが、改めて自分がいたところを法律上解説し、その施策等について客観的に説明することができたので一定距離をおいた見方ができて私にとっても有意義でした。それに、私は、話のテンポが速いということでいつも注意しているのですが、大学生や司法修習生はこのテンポについてきてくれたので、そういう意味でも気持ち良く話すことができたと思います。
あなたは、通常は、大学院生相手の講義をしていますが、企業の担当者の時の講演と一番違うのはどこですか?
弁護士
やはり、大学院の講義は理屈を重視するということですね。
社労士
そうですね。企業の担当者は、法律については、それが実際どのように適用されて、業務にどのような影響があるかということが先決ですね。切実さが違うのかもしれません。
ところで、今まで学生相手に話した時と違うのはテレビドラマの「ダンダリン」のおかげで少しは監督署も周知されてきた感がありました。あのようなドラマがなければ、監督署の存在は知らなかったと言っている学生もいました。ドラマは、監督署の仕事の実態とは異なるところも多いのですが、周知という点からすると効果があったのではないかと思いました。
弁護士
そうですね。履行確保機関としての存在が知られていないということは、必要な人が権利の行使ができないということですからね。そういう意味でも周知は必要ですね。
紹介
*社労士 森井博子 元労働基準監督署長
*弁護士 森井利和
*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****
「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著
「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


私は、10月は、大学生や司法修習生に対する講演が多かったのですが、いつもは、企業の労務の担当者や安全の担当者の方相手が多いので、また違った雰囲気で話ができました。
弁護士
講演の中身はどのようなものだったのですか?
社労士
労働基準法や労働安全衛生法の履行確保ということで、主として監督署・労働局・労働基準監督官について話をしたのですが、改めて自分がいたところを法律上解説し、その施策等について客観的に説明することができたので一定距離をおいた見方ができて私にとっても有意義でした。それに、私は、話のテンポが速いということでいつも注意しているのですが、大学生や司法修習生はこのテンポについてきてくれたので、そういう意味でも気持ち良く話すことができたと思います。
あなたは、通常は、大学院生相手の講義をしていますが、企業の担当者の時の講演と一番違うのはどこですか?
弁護士
やはり、大学院の講義は理屈を重視するということですね。
社労士
そうですね。企業の担当者は、法律については、それが実際どのように適用されて、業務にどのような影響があるかということが先決ですね。切実さが違うのかもしれません。
ところで、今まで学生相手に話した時と違うのはテレビドラマの「ダンダリン」のおかげで少しは監督署も周知されてきた感がありました。あのようなドラマがなければ、監督署の存在は知らなかったと言っている学生もいました。ドラマは、監督署の仕事の実態とは異なるところも多いのですが、周知という点からすると効果があったのではないかと思いました。
弁護士
そうですね。履行確保機関としての存在が知られていないということは、必要な人が権利の行使ができないということですからね。そういう意味でも周知は必要ですね。
紹介
*社労士 森井博子 元労働基準監督署長
*弁護士 森井利和
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「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


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有期労働契約の雇止め (有期労働契約①)
2013.10.23.Wed.12:03
社労士
連載している労働基準広報の11月1日号は、有期労働契約の雇止め等について解説しています。具体的項内容は、*有期労働契約の更新・雇止め基準、*東芝柳町工場事件最高裁判決*日立メデイコ事件最高裁判決*雇用の継続への合理的期待とは*労働契約法改正・労契法19条*雇止めの理由の内容*労働基準法14条*労働契約期間の下限等です。
今回は、この労働契約法の改正の部分を説明していくことにします。
弁護士
2012年(平成24年)の改正労働契約法では、有期雇用の雇止めについて、一定の場合には解雇権濫用の法理が類推適用されるという判例の考え方が明文化されました。
社労士
労働契約法19条ですね。
弁護士
労働契約法19条では、①実質的に無期労働契約と同視できる場合と②更新の期待に合理的な理由がある場合に、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期等労契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。」と規定されています。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」という言葉は、無期労働契約の解雇の16条の言葉と同じです。これからは、いま説明した①と②の場合には、類推適用ではなく、この19条が直接適用されることになります。
社労士
有期労働契約の雇止めにも、これらの場合には、客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要とされるのですね。では、これまでの解雇権濫用法理の類推適用をしていた判例との関係はどうなのですか?
弁護士
①の実質無期契約型が東芝柳町工場事件の類型、②の雇用継続の合理的期待型が日立メディコ事件の類型であると言われています。
社労士
では、今回の労働契約法改正で従来の判例での取扱いと異なっているところはないのですか?
弁護士
2点ほどあります。第1点が、契約期間満了までの間に「労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合」とあって、従来の判例では必要がなかった、労働者からの申込みが必要となった点です。但し、この点は「遅滞なく」が割合緩やかに解釈されるようで、更新しない通知があって、これに「いやだ」「困る」と言うなど、労働者による何らかの反対の意思が使用者に伝わるものでも「更新の申込み」としてかまわないと解されています(平24.8.10基発0810第2号)。第2点は、雇止めに客観的合理的理由や社会的相当性がない場合、期間の定めがない労働契約となるのか、あるいはやはり期間労働契約となって更新されるのか、もし後者であれば、その理論的根拠は何かが、必ずしもはっきりとはしていませんでしたが、申込に対する承諾とみなすということで、更新されたものとして取り扱うことがはっきりしたということです。
社労士
以上のほか、判例を条文化したことにより雇止めの水準がどうなるか等解説をしておりますますので、労働基準広報の11月1日号をご覧になっていただければと思います。
紹介
*社労士 森井博子 元労働基準監督署長
*弁護士 森井利和
*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****
「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著
「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


連載している労働基準広報の11月1日号は、有期労働契約の雇止め等について解説しています。具体的項内容は、*有期労働契約の更新・雇止め基準、*東芝柳町工場事件最高裁判決*日立メデイコ事件最高裁判決*雇用の継続への合理的期待とは*労働契約法改正・労契法19条*雇止めの理由の内容*労働基準法14条*労働契約期間の下限等です。
今回は、この労働契約法の改正の部分を説明していくことにします。
弁護士
2012年(平成24年)の改正労働契約法では、有期雇用の雇止めについて、一定の場合には解雇権濫用の法理が類推適用されるという判例の考え方が明文化されました。
社労士
労働契約法19条ですね。
弁護士
労働契約法19条では、①実質的に無期労働契約と同視できる場合と②更新の期待に合理的な理由がある場合に、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期等労契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。」と規定されています。「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」という言葉は、無期労働契約の解雇の16条の言葉と同じです。これからは、いま説明した①と②の場合には、類推適用ではなく、この19条が直接適用されることになります。
社労士
有期労働契約の雇止めにも、これらの場合には、客観的に合理的な理由と社会的相当性が必要とされるのですね。では、これまでの解雇権濫用法理の類推適用をしていた判例との関係はどうなのですか?
弁護士
①の実質無期契約型が東芝柳町工場事件の類型、②の雇用継続の合理的期待型が日立メディコ事件の類型であると言われています。
社労士
では、今回の労働契約法改正で従来の判例での取扱いと異なっているところはないのですか?
弁護士
2点ほどあります。第1点が、契約期間満了までの間に「労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合」とあって、従来の判例では必要がなかった、労働者からの申込みが必要となった点です。但し、この点は「遅滞なく」が割合緩やかに解釈されるようで、更新しない通知があって、これに「いやだ」「困る」と言うなど、労働者による何らかの反対の意思が使用者に伝わるものでも「更新の申込み」としてかまわないと解されています(平24.8.10基発0810第2号)。第2点は、雇止めに客観的合理的理由や社会的相当性がない場合、期間の定めがない労働契約となるのか、あるいはやはり期間労働契約となって更新されるのか、もし後者であれば、その理論的根拠は何かが、必ずしもはっきりとはしていませんでしたが、申込に対する承諾とみなすということで、更新されたものとして取り扱うことがはっきりしたということです。
社労士
以上のほか、判例を条文化したことにより雇止めの水準がどうなるか等解説をしておりますますので、労働基準広報の11月1日号をご覧になっていただければと思います。
紹介
*社労士 森井博子 元労働基準監督署長
*弁護士 森井利和
*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****
「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著
「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


埋設物のある溝で発生した土砂崩壊
2013.10.22.Tue.23:34
社労士
連載している労働安全衛生広報の10月15日号は、「埋設物のある溝で発生した土砂崩壊」を取り上げています。事案は、ガス本管新設工事現場でガス管埋設の為掘削していた溝に埋設されていた古いコンクリート壁の一部が崩壊し、それに伴う二次崩壊で土砂が崩壊し、溝の中で作業していた労働者2名が土砂に胸まで埋まり、被災ものです。今回は、土砂崩壊災害の原因と対策、発注者に対する災害防止にかかる要請、事業者に対する監督署の是正勧告例、建設業と長時間労働、土砂崩壊と安全配慮義務・判例について解説をしてます。
弁護士
今回の事案では、どのような違反が認められたのですか?
社労士
下請については、
①地山の掘削の作業を行う場合において、地山の崩壊、埋設物等の損壊等により労働者に危険を及ぼすおそれがあるにもかかわらず、作業箇所及びその周辺の地山について埋設物等の有無及び状態等を調査していないことから労働安全衛生法第21条第1項、労働安全衛生規則第355条違反
② 土止め支保工作業主任者に、作業の方法を決定し、作業を直接指揮する等の職務を行わせていないことから労働安全衛生法第14条、労働安全衛生規則第375条違反
③埋設物等に近接する箇所で作業を行う場合でこれらの損壊等により労働者に危険を及ぼすおそれがあるにもかかわらず当該危険を防止するための措置を講じた後に作業を行わせなかったことから労働安全衛生法第21条第1項、労働安全衛生規則第362条違反
が認められております。
元請については、
土砂崩壊するおそれがある場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うにもかからず当該関係請負が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように技術上の指導その他の必要な措置を講じていないことから労働安全衛生法第29条の2、労働安全衛生規則第634条の2違反
が認められています。
弁護士
この事案では、発注者のガス株式会に対しても監督署からす建設工事を発注する際は、契約時に降雨日、降雪日などの不稼働日をも考慮した適正な工期の設定に努めるようにとの要請が行われていますね。このような要請は、よく行うのですか?
社労士
そうですね。災害防止上、必要な場合は要請することもあります。労働安全衛生法3条3項では、「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない」と規定しています。やはり、安全に工事を進めていくうえでは適正な工期の設定は配慮しなければならないと思います。
なお、本件では、このほか、地山と一体化させる措置が講じられていないコンクリート壁が崩落したことによって、近接した場所で明り掘削の作業をしていた下請事業者の労働者が死亡し、遺族が元請会社と発注者である市に対して損害賠償請求をした事件(広島高判平21.4.23判例秘書06520218)等の判例についても解説していますので、詳しくは労働安全衛生広報の10月15日号をご覧になってください。
紹介
*社労士 森井博子 元労働基準監督署長
*弁護士 森井利和
*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****
「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著
「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


連載している労働安全衛生広報の10月15日号は、「埋設物のある溝で発生した土砂崩壊」を取り上げています。事案は、ガス本管新設工事現場でガス管埋設の為掘削していた溝に埋設されていた古いコンクリート壁の一部が崩壊し、それに伴う二次崩壊で土砂が崩壊し、溝の中で作業していた労働者2名が土砂に胸まで埋まり、被災ものです。今回は、土砂崩壊災害の原因と対策、発注者に対する災害防止にかかる要請、事業者に対する監督署の是正勧告例、建設業と長時間労働、土砂崩壊と安全配慮義務・判例について解説をしてます。
弁護士
今回の事案では、どのような違反が認められたのですか?
社労士
下請については、
①地山の掘削の作業を行う場合において、地山の崩壊、埋設物等の損壊等により労働者に危険を及ぼすおそれがあるにもかかわらず、作業箇所及びその周辺の地山について埋設物等の有無及び状態等を調査していないことから労働安全衛生法第21条第1項、労働安全衛生規則第355条違反
② 土止め支保工作業主任者に、作業の方法を決定し、作業を直接指揮する等の職務を行わせていないことから労働安全衛生法第14条、労働安全衛生規則第375条違反
③埋設物等に近接する箇所で作業を行う場合でこれらの損壊等により労働者に危険を及ぼすおそれがあるにもかかわらず当該危険を防止するための措置を講じた後に作業を行わせなかったことから労働安全衛生法第21条第1項、労働安全衛生規則第362条違反
が認められております。
元請については、
土砂崩壊するおそれがある場所において関係請負人の労働者が当該事業の仕事の作業を行うにもかからず当該関係請負が講ずべき当該場所に係る危険を防止するための措置が適正に講ぜられるように技術上の指導その他の必要な措置を講じていないことから労働安全衛生法第29条の2、労働安全衛生規則第634条の2違反
が認められています。
弁護士
この事案では、発注者のガス株式会に対しても監督署からす建設工事を発注する際は、契約時に降雨日、降雪日などの不稼働日をも考慮した適正な工期の設定に努めるようにとの要請が行われていますね。このような要請は、よく行うのですか?
社労士
そうですね。災害防止上、必要な場合は要請することもあります。労働安全衛生法3条3項では、「建設工事の注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならない」と規定しています。やはり、安全に工事を進めていくうえでは適正な工期の設定は配慮しなければならないと思います。
なお、本件では、このほか、地山と一体化させる措置が講じられていないコンクリート壁が崩落したことによって、近接した場所で明り掘削の作業をしていた下請事業者の労働者が死亡し、遺族が元請会社と発注者である市に対して損害賠償請求をした事件(広島高判平21.4.23判例秘書06520218)等の判例についても解説していますので、詳しくは労働安全衛生広報の10月15日号をご覧になってください。
紹介
*社労士 森井博子 元労働基準監督署長
*弁護士 森井利和
*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****
「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著
「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


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