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セクハラ指針とセクハラに係る判例

2014.05.28.Wed.22:10
社労士

 連載している労働基準広報の2014年6月1日号は、セクハラ指針とセクハラに係る判例について解説しています。具体的項内容は、

*事業主が雇用管理上講ずべき措置
*セクハラ指針の性格
*会社の使用や責任
*東京セクシャルハラスメント(A協同組合)事件
*大阪セクシャルハラスメント(歯材販売会社)事件
*京都セクシャルハラスメント(呉服販売会社)事件
*職場環境配慮義務

 等です。
 
 今回は、このうち、職場環境配慮義務の判例について紹介していくことにします。

社労士 

 それでは、職場環境配慮義務の内容にはどのようなものがあるのですか?


弁護士
  
  まず施設を整備する義務があります。京都セクシャルハラスメント(呉服販売会社)事件(京都地判平9.4.17労働判例716号49頁)は、男性従業員が女子更衣室でビデオを撮影しようとした事件で、会社には「雇用契約に付随して、原告のプライバシーが侵害されることがないように職場環境を整える義務がある」と判断しています。
   
 次に、従業員に対する監督教育義務があります。例えば、勤務中に卑猥な言動がある従業員の行為を見逃して何の注意もしなかった場合に職場環境配慮義務を尽くしていなかったと判断された事例があります(三重セクシャルハラスメント(厚生農協連合会)事件(津地判平9.11.5労働判例729号54頁)。
   
  また、誠実対応義務もあるでしょう。職場トイレの覗き見行為について数日後に漫然と行為者の言い分を聞くといった場合(仙台セクハラ(自動車販売会社)事件、仙台地判平13.3.26労働判例808号13頁)、会社が被害者からの申立をとりあわず我慢を強いたという場合(青森セクハラ(バス運送業)事件、青森地判平16.12.24労働判例889号19頁)に損害賠償責任が認められています。
   
  さらに、プライバシー保護義務もあります。先ほどの京都セクシャルハラスメント事件では、ビデオの隠し撮りのほか、ビデオの隠し撮りを行った男性従業員と女性従業員が男女関係にあるかのような発言をしたことも問題となってします。裁判所は、会社には、「雇用契約に付随して、原告のプライバシーが侵害されることがないように職場の環境を整える義務がある」と判断したほか、「雇用契約に付随して、原告がその意に反して退職することがないように職場の環境を整える義務がある」としています。


弁護士 

  職場環境配慮義務については、鹿児島セクシャルハラスメント事(鹿児島地判平13.11.27労働判例836号151頁)があります。医師会の職員が研修旅行の懇親会の二次会の席上で事務局長らかキスをされたという事件で、医師会の使用者責任は認められませんでしたが、当時の男女雇用機会均等法(平11.4施行)21条のセクハラ行為防止のための配慮義務(現行法では11条の措置義務)を引用して、使用者である医師会はセクハラ行為を防止する組織的な措置を全くとっておらず、職場環境を維持・調査する義務を尽くしていたとは言い難いと判断しています。ここでは、公法上の義務として規定されている男女雇用機会均等法の規定が、私法上の環境配慮義務の内容となっていることを見ることができます。


社労士  

 就業環境配慮義務といっても、会社としてどこまで行えばよいのかという問題もあります。また、会社から見ればそれほど問題のない行為をセクハラであると訴えた場合には、どうすればよいのでしょうか?


弁護士  


 相談の窓口は広く取るべきでしょうね。また、事実の調査も公平に行うべきです。
ただ、「使用者が、当該セクハラ被害に相応する回復措置を取っていると評価できる場合には、特段の事情がない借り、労働者は、同被害を理由に、性的危険性の存在を主張することはできないと解するのが相当である。」と判断した事例があります(名古屋セクシャルハラスメント事件、名古屋地判平16.4.26労働判例873号18号)。


社労士 

  どんな事件だったのですか?


弁護士  


 事務所内で行われた送別会の終了後に、飲み過ぎた女性社員が他の女性社員2名(原告を含む)に会社外の公衆トイレ付近で介抱され、トイレ付近で座り込んでいるのを、通りかかった部長と課長(いずれの事務所内の送別会に出席)が上腕部を片方ずつ持って助け起こし、当該女性社員が立ち上がったところを部長が女性の両肩に一瞬自分の両手を乗せた。これを見ていた介抱していた女性社員が、これはセクシャルハラスメントであるとして出社を拒否し、さらに名古屋事務所から大阪事務所への配転を拒否したことを理由として解雇された事件で、解雇は有効と判断されました。     


社労士  

 この事件では、当該の職場での就労に性的な危険性を伴うと客観的に判断される場合には、労働者は同職場での就労の拒絶はできるが、「かかる職場での性的危険性の存否は、将来の同種行為の反復の可能性を含め、上記のとおり客観的に判断される」とし、本件では相応の措置が取られていて、就労を拒否する理由はないと判断していますね。

弁護士  

 この事件では、原告の女性社員は、そのほかのセクハラ行為も主張していましたが、その事実は認定されませんでした。認定された行為との関係でいえば、当該女性の反応は過剰なものといっていいでしょう。
社労士  まずは事実関係の調査とそれに相応する回復措置ですね。しかし、回復措置と言っても、客観的な相当性という限度があるということですね。
 
  身体的接触があっても、加害者とされる上司に不法行為責任が発生するまでとはいえないと判断された例もあります。部長が出張先のホテルの部屋でワインを飲んだ後、部下の女性を横抱きにして持ち上げたがいやがったのですぐにその行為をやめた(ドアは開いている)ことがあったので、会社は当該女性労働者の相談を受けて部長に命じて女性労働者宛てに謝罪文を提出させました。その後にも手首を触ったり、女性の自宅内を見ようとしたり、ほめるとき頭をなでたり頭をぽんぽん叩いたりした行為がありました。裁判所は、これらの行為をセクハラにはあたるが軽微な行為であるとしています。また、会社は部長を副社長付に異動させて当該女性労働者との接点をなくし、課長に降格して営業所に異動させるなどして顔を合わせることのないようにし、全体会議でセクハラ研修を実施したりしています。これらのことを考えて、不法行為が成立するというのは相当ではないと判断しています(X社事件、東京地判平22.4.20労働経済判例速報2089号26頁)。


社労士

 ここでの会社の事後対応は指針にのっとったものですね。たとえセクハラが発生しても、その後の会社の機敏な対応が重要ですね。
 
 以上のほか、セクハラに係る上記のほか判例やセクハラ指針について解説をしておりますますので、労働基準広報の2014年6月1日号をご覧になっていただければと思います。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****

「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著

「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


事件ファイル

労働審判

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特別養護老人ホームで発生した疥癬による重大災害

2014.05.28.Wed.21:49
社労士 

 連載している労働安全衛生広報の5月15日号、「*疥癬による重大災害」を取り上げています。事案は、特別養護老人ホームの入所者及び介護職員が次々疥癬に感染したというものです。
この中では
 *疥癬とは
 *疥癬と災害調査
 *高齢者介護施設における疥癬感染対策マニュアル
 *是正勧告書・指導票
 *疥癬にかかる労災認定
 *業務上疾病の労災認定
 *労基法施行規則別表第1の2第6号の改正
等について解説をしてます。

今回はこの中から、労働基準法施行規則別表の改正について紹介します。


弁護士

  「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合」や「業務上負傷し又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するとき」や「業務上死亡した場合」には、使用者は、療養補償、休業補償、障害補償、遺族補償、葬祭料の労災補償をするする義務があります(労基法75条ないし77条、79条、80条)が、労基法と同時に制定公布された労働者災害補償保険法は、全事業を適用対象とし、労基法に定められた労災補償責任を補填する、療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病保障年金、介護補償給付の制度を定め(労災12条の8第1項、13条、14条、15条、16条ないし19条の2)、この労災保険法による労災保険給付も「労働者の業務上の負傷、疾病、傷害又は死亡」(同法7条1項1号)に対して行われ、この労災保険給付があった場合には、使用者はその限度で労基法の労災補償の責任を免れることになります(労基法84条1項)。
  労基法の労災補償給付や労災保険法上の労災保険給付を受けるためには、「負傷、疾病、障害、死亡」が「業務上」のものであることが必要ですが、「業務上」といえるためには、当該労働者の業務と負傷、疾病、障害、死亡との間に相当因果関係があることが必要です。これを「業務起因性」といいますが、この業務起因性は、別の言葉でいえば、業務に内在する危険の現実化したものと評価されることです。
 事故性のある傷害や死亡の場合にはこの業務起因性の判断は比較的容易ですが、事故性のない疾病が業務上のものであるかどうか、つまり業務と疾病の間の相当因果関係(業務起因性)は、医学的知識を必要とし、それほど容易なことではありません。そこで、業務上疾病と判断される場合がどのような場合かが厚生労働省令で定められることになっており(労基法75条2項)、これに基づいて労規則35条及び別表第1の2が定められています。別表第1の2は次のようなものです。
 「一 業務上の負傷に起因する疾病
  二 物理的因子による次に掲げる疾病  
   1 紫外線にさらされる業務による前眼部疾患又は皮膚疾患
         :
         :
  六 細菌、ウィルス等の病原体による次に掲げる疾病
   1 患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患
         :
         :
   5 1から4までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他細菌、ウィルス等の病原体にさらされる業     務に起因することの明らかな疾病
  八 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、 
   高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓税突然死を含む)若しくは解離性大動脈瘤又はこれらの疾病に付
   随する疾病
  九 人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の
   障害又はこれらの疾病に付随する疾病
  十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾患
  十一 その他業務に起因することの明らかな疾病            」

 ここでは、医学的に見て業務により生ずる蓋然性の高い疾病をあげて、当該業務についている労働者が別表第1の2にあげられているそれぞれの疾病にり患した場合には、定型的に業務上であると判断しようとするものです。しかし、産業の発展によって、次々と有害物質や有害作業が生じてきます。また、医学の発展でこれまで因果関係が必ずしもはっきりしていなかった有害物質や有害作業と疾病との間の因果関係が明確になってゆきます。そこで、別表第1の2第10号では「前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣の指定する疾病」(昭56.2.2労告7号「労働基準法施行規則の規定に基づき厚生労働大臣の指定する疾病を定める告示」)とし、同第11号では、「その他業務に起因することの明らかな疾病」と規定しており、別表第1の2が限定列挙ではなく例示列挙であることを明示しています。


社労士
 この別表第1の2はこれまで何度かの追加があり、上記の8号、9号は、脳・心臓疾患や過労自殺など精神疾患に関する事例の増加を受けて、平成22年(2010年)改正によって追加されたものです。この改正では、さらに、労規則別表第1の2の第6号1に、「患者の診察若しくは看護の業務」に「介護の業務」が加えられました。これは、改正前には第6号5の規定に基づいて介護の業務による疥癬等の伝染性疾患が業務によるものであるとの認定が多発していた状況から、介護業務と疥癬等の疾病には定型的な因果関係を認めることができると判断されたためです。
 また、最近では、印刷会社に勤務していた労働者に胆管がんが多発しているという事態を受けて、別表第1の2第7号11に「1,2-ジクロロプロパンにさらされる業務による胆管がん」、同別第7号12に「ジクロロメタンにさらされる業務による胆管がん」が追加されました(平成25年10月1日施行)。このように、新たな危険有害物や危険有害作業の発生や医学的知見の発達によって、労基法施行規則別表第1の2で定型的に業務と疾病との因果関係のあるとされるものは追加されたり変更されたりしています。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****

「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著

「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


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