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無資格の潜水業務での溺死災害

2014.10.31.Fri.23:32
社労士 

 連載している労働安全衛生広報の10月15日号、「無資格の潜水業務での溺死災害」を取り上げています。事案は、「国立大学法人○○大学大学院の水産研究科水産学研究室の研究員が○○島でサンゴの試料サンプリングをするために潜水したが、行方不明となり、3時間後に海底で発見されたというものです。
 この中では
  *潜水業務と資格
 *国立大学法人への監督権限
 *労働者死傷病報告
 *災害調査
 *高気圧作業安全衛生規則
 *安全配慮義務
 等について解説をしてます。


弁護士

  なお、潜水業務については、労働安全衛生法では、潜水士免許を受けた者でなければ、就かせてはならないのですが、被災者は、この資格を有していなかったことから安衛法違反として送検されました。
 
社労士

  はい、本件は、資格のない研究員に潜水業務をさせていた点が問題となったものです。
資格には、免許と都道府県労働局に登録した団体が行う技能講習の修了、その他厚生労働省令で定める資格を有する者の3つがあります(労安衛法61条)が、潜水業務には「免許」が必要です。「免許」というと、思い浮かぶのは自動車の「運転免許」です。自動車の運転免許の制度は、国家が、一般的には運転を禁止して、都道府県公安委員会の免許を持っている者のみにこの禁止を解除して自動車の運転を許容するという制度です。これと同様、潜水士免許は、公的機関である都道府県労働局長が出します。
これに対して、技能講習は、「都道府県労働局長の登録を受けた者」が行う講習で、その講習を修了したことによって一定の技能を持っていることを当該講習主催者が認証するものです。潜水業務を行うには、技能講習の修了では足りず、免許が必要です。それだけ危険を伴う業務であると評価されているのです。
 
 このような、労安衛法における免許や技能講習の修了といった資格の制度は、危険を伴う作業の危険が現実化して災害が発生した場合、当該労働者のみならず周囲の労働者、さらには一般公衆にまで被害が生ずるおそれがあるため、危険な作業を伴う業務には、必要な知識と技能を持った者のみを従事させるというものです。例えば、ボイラーを適切に操作しないと爆発のおそれがありますし、クレーンや建設機械には転倒、衝突のおそれがあります。そこで、資格を持つ者以外にこれら危険を伴う操作や運転の作業に従事させることを使用者に禁止し(労安衛法61条1項)、さらに、資格のないままこれら危険を伴う作業に従事することを労働者に禁止しています(同法61条2項)。潜水免許のない者に潜水業務をさせた場合、事業者は、労安衛法61条1項(労安衛令20条9号、高気圧作業安全衛生規則12条)違反となり、同法119条による処罰の対象となりますし、その作業を行った労働者も同法61条2項違反となり、同法120条による処罰の対象となります。



弁護士

 
 ところで、同じ潜水でも、自分の趣味で行うダイビングと、業務としての潜水は異なっています。趣味で行うダイビングには潜水の免許は不要です(機材を借りる際には、民間団体が発行するいわゆるCカード(技能認定カード)が必要となるが、法律上の裏付けはない)が、業務として行う潜水には、免許が必要です。
 本件では、研究員は大学(国立大学法人)に雇用された労働者で、その業務として潜水してサンゴの試料サンプルを採集しようとしたというものですので、労働安全衛生法が適用されるのです。そして、その際この作業の指揮命令をしたのは教授ですので、同教授が潜水免許がないのに被災者を潜水業務につかせたとして送検されているのです。
 なお、さきほどの趣味として行うダイビングでも、ダイビングの案内をする会社に雇用されているインストラクターが、そのダイビングの案内をするについては、やはり潜水士の免許が必要となります。本件でのダイビングショップのガイド役の店員は、ダイビングショップの業務としてガイドをしているので、やはり潜水士免許が必要です。


 以上のほか、 *国立大学法人への監督権限   *労働者死傷病報告 *災害調査 *高気圧作業安全衛生規則等も解説しておりますので労働安全衛生広報の10月15日号をご覧になっていただければと思います。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****

「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著

「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著



事件ファイル

労働審判

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ブラック企業②

2014.10.31.Fri.23:13
社労士

 労働基準広報の2014年10月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で2回目となります。今回は、1回に引き続きブラック企業に関係する質問に答えています。

 質問は、以下の3問です。

① 取締役人事部長をしています。
   近頃、過労死を発生させた会社の役員に責任を認めた判例が出たということですが、そのポイントをご教授ください。  またこの判例を役員会議での研修材料として使いたいと思っています。そこで、説明の際に、判決内容からすると、役  員はどのような点に気を付けなければならないかということも説明したいと思いますので、その点もご教授ください。


② 会社の労務担当です。
 当社は経営状態が悪化しているため、人員削減を考えているところです。色々な人員削減策を検討しているところです 
 が、今、「追い出し部屋」が問題となっていると聞きました。この問題で企業が気を付けなければならないことを教えて下
 さい。

③ 「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会による調査結報告書が公表されましたが、同業種でもあることか   ら、当社でも関心をもっております。この調査報告書のポイントをご教授ください。また、会社に随分厳しい内容が書かれ ていますが、当社も少なからず、共通している問題があります。今後、改善を図るためにはどのようなことに注意すれば よいかご教授ください。


   事業場外労働のみなし労働時間制をとる場合、時間外労働、休憩、深夜業、休日はどのように扱うのでしょうか?また、事業場外労働のみなし労働時間制をとる場合、年少者や妊産婦の保護規定との関係はどのようになるのでしょうか?


*判決の特徴

社労士


 この判例は、大庄事件(大阪高判平23.5.25労働判例1033号24頁)で、会社の上告、上告受理申し立てが認められずに平成25年9月24日に最高裁(第三小法廷)で確定した判例ですね。
 事案は、長時間労働の結果飲食店従業員が急性左心機能不全により死亡した事件だったのですが、「業務に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務」が会社にあるほか、当該具体的状況の中では取締役にも「労働者の生命・健康等を損なうことがないような体制を構築すべき義務」があるとして、会社の損害賠償責任のほか取締役の個人責任(会社法429条1項、民法709条)も認められた内容です。


弁護士  

 この事件は、過労死事件について、長時間労働を前提とする勤務体系や給与体系を取っているとして、会社の安全配慮義務違反だけでなく、取締役の個人責任まで認められた判決です。
 直接の長時間労働の指示者の不法行為責任が問題となる事例は多くあります。有名な電通事件(最(2小)判平12.3.24労働判例779号13頁)では、会社に安全配慮に関する注意義務があり、上司もこの注意義務に従って権限を行使すべきであるのに具体的措置を取らなかった点を上司の不法行為の根拠としており、会社の使用者責任(民法715条)を認めたものです。
 また、印刷会社の代表取締役の秘書的業務及び庶務的業務に従事していた総務次長が脳内出血を発症し、後に難治性肺炎により死亡したことについて会社と代表取締役個人の民事責任が認められた事件があります(大阪地判平24.2.8自保ジャーナル1880号176頁)が、これは、この労働者を代表取締役が直接指揮命令していたというもので、代表取締役が「担当業務量を調整し、労働時間について指導するなどの措置をとらなかった」ことを理由として、会社法429条1項(当時は商法266条の3第1項)に基づいて代表取締役に損害賠償義務があることを認めたのです。これに対し、大庄事件は、当該労働者に直接の指揮監督をしているわけではない取締役・代表取締役が損害賠償責任があるとされたのです


*取締役・代表取締役の損害賠償責任の根拠


社労士  

 裁判所はその根拠をどのように説明しているのですか?


弁護士

 この事件での会社の安全配慮義務違反の内容は、「現実に全社的かつ恒常的に存在していた社員の長時間労働について、これを抑制する措置が取られていなかったこと」です。管理本部長、店舗本部長、第一支社長である取締役や代表取締役に会社法429条1項による第三者に対する責任が肯定されたのは、「現実に従業員の多数が長時間労働に従事していることを認識していたかあるいはきわめて容易に認識し得たにもかかわらず、控訴人会社にこれを放置させ是正させるための措置を取らせていなかった」という点からです。


*会社法429条1項


社労士  

会社法429条1項について説明をしてください。これは、不法行為とはどのように違うのですか?


弁護士  

 会社法429条1項は役員等(取締役、会計参与、監査役、執行役員、会計監査役のこと。会社法423条1項)がその職務を行うについて悪意または重大な過失があって、それによって第三者に損害が生じたときには、その第三者に対して損害賠償責任を負うという規定ですが、不法行為(民法709条)責任とは別に会社法上定められている特別の責任です。
会社の取締役などの役員等は、その任務を怠ったことによって会社に損害が発生したときには、会社に対する損害賠償責任を負います(会社法423条)が、取締役等の職務遂行にあたって悪意または重大な過失があって第三者に損害を与えた場合には、第三者に損害賠償する責任もあるということです。


社労士  

 不法行為や使用者責任とはどう違うのですか?


弁護士  

 過重労働に関して問題となるのは実際の会社運営上で発生する問題ですが、取締役や執行役員の行為が問題となります。ここでは取締役について説明します。取締役の第三者に対する不法行為責任が発生するには、第三者の権利侵害についての故意または過失が必要となります。例えば、労務担当取締役が過重労働を指示したこと、あるいは過重労働を認識しておりながら適正な是正措置を取らないでそれを放置したというような場合、その労務担当取締役は不法行為責任を負います。これは、労働者の安全配慮についての過失があると考えられるからです。これに対して、会社法429条1項の責任は、取締役の職務遂行についての「悪意又は重大な過失」のある場合に発生します。ですから、不法行為が成立しなくても、会社法429条1項の責任が発生することもありますし、逆に不法行為が成立しても会社法429条1項の責任が発生しないこともあります。


社労士  

 具体的にはどのような差異なのですか?不法行為の成立には「故意又は過失」が必要であるのに対して、会社法429条1項は「悪意又は重大な過失」が必要で、軽過失(重過失ではない場合)の場合には責任がないということになるので、範囲が狭いのではないですか?


弁護士  

 実は大庄事件の一審判決は、取締役の会社法429条1項に基づく責任を認めましたが、不法行為責任を認めていません。それは、取締役が、労働時間が過重にならないよう適切な体制をとらなかったこと、1ヶ月100時間の時間外労働を前提とする体制をとっていたこと、それに基づいて労働者が就労していることを十分に認識できたことなどから、「被告取締役らは、悪意又は重大な過失により、そのような体制をとっていたということができ、任務懈怠があった」と判断しています。一方で、被告取締役は当該労働者の労働時間を把握・管理する立場ではなく、休憩、休日をとらせるなどの具体的措置をとる義務があったとは認められないことを理由として、取締役の不法行為責任は否定されています。控訴審判決は、取締役に会社法429条1項の責任、不法行為責任の双方とも認められたのですが、このように不法行為責任の発生する場合と会社法429条1項の責任の発生する場合は少しずれています。双方の要件は異なっており、どちらが広いともいえません。


*役員が気を付けること


社労士  

  この判例から何が言えるでしょうか?


弁護士  

 会社には、労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないようにする義務があります。これが安全配慮義務の一内容をなしています。これは会社自体が負う義務です。また、直接の指揮命令権者である上司が過重労働によって労働者が疲労困ぱいしているのを知っていながらさらに残業を命じた結果過労死が発生したような場合には、会社の損害賠償責任のほか、当該上司も不法行為責任を負うことになるでしょう。大庄事件の大阪高裁判決は、これに加えて、経営者(役員)には、労働者の生命・健康を損なうことがないような体制を構築し、長時間勤務による過重労働を抑制する措置を採る義務があると判断しています。


社労士 

 裁判所は、災害性の労働災害の防止のための安全管理体制の確立と同じように、過重労働による健康障害を発生させないような体制の確立を義務付けていると言えそうですね。そうすると、会社にとっても経営者(役員)にとっても、労働者に過重労働させないような体制を構築する必要があるということになりますね。


弁護士  

 そうですね。会社や役員が労働者に過重労働させないような体制を構築するということは、まず従業員が長時間労働をどの程度行っているかを把握することが必要となります。そして、その結果長時間労働を認識した役員は放置することなく是正させるための措置を取らせるということが必要となります。それをしないと役員の責任が追及される可能性があると思います。


社労士

 以上のほか、「追い出し部屋」問題での注意点や「すき家」第3者委員会報告のポイント等の質問にも具体的にお答えしていますので、労働基準広報の2014年10月1日号をご覧になっていただければと思います。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



*****森井労働法務事務所関連出版物の紹介*****

「The検証!! 労働災害事件ファイル」(労働調査会)森井博子&森井利和共著

「実務に活かす労働審判」(労働調査会)森井利和著


事件ファイル

労働審判




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