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産業用ロボットによる挟まれ災害

2015.06.28.Sun.16:03
社労士 

 連載している労働安全衛生広報の2015年5月15日号、「産業用ロボットによる挟まれ災害」を取り上げています。事案は、自動車部品製造工場において、ベルトコンベアに設けられた不良品取り出し用の産業用ロボットが半製品(以下、「ワーク」という)を落としたのに気が付いた被災者がロボットの運転を停止しないでワークを取り除こうとしてロボットの可動範囲に立ち入ったため、大きく旋回してきたマニプレータとベルトコンベアの間に挟まれたものです。

この中では
  *産業用ロボットとは
  *産業用ロボットの危険の防止
 *産業用ロボットに係る規制改革と施行通達の一部改正
  *労働者死傷病報告
 *災害時監督
 *指導票
  *機械災害と安全配慮義務
等について解説をしてます。

 今回は機械による巻き込まれ災害についての判例をいくつか紹介していますが、今回は、この中から、異常時の対処について具体的説明や注意が行われていなかったなどの点で安全配慮義務に反する過失があると判断された裁判例を紹介します。


弁護士



 異常時の対処について具体的説明や注意が行われていなかったなどの点で安全配慮義務に反する過失があると判断された裁判例として、Aサプライ(知的障害者死亡事故)事件(東京地八王子支判平15.12.10労働判例870号50頁)があります。
  この事件は、クリーニング工場において知的障害者である労働者が業務用大型自動洗濯・乾燥機に巻き込まれて死亡した事故について、代表取締役社長、代表取締役副社長、そして会社に対して、遺族が損害賠償請求をしたものです。洗濯物がシェーカー(洗濯物をほぐす機械)内のエアシューター吸入口に詰まったのをシェーカー内に入って除去したところ、シェーカーが動き出して労働者がこれに巻き込まれたというものです。会社側は、ひととおり機械の運転方法について説明したのですが、自動洗濯ラインの仕組みやトラブル時の対処方法、作業上及び安全上の注意事項に関して、具体的な説明を行っていません。特に、コンベヤーに乗ってはならないこと、シェーカー内に進入してはならないこと、やむを得ず進入せざるを得ない場合には必ずエアーシューター制御盤のシェーカー、エアーシューターのセレクタースイッチを「停」にしなければならないこと等については安全上の注意事項としては必須のことです。
  そこで、裁判所は、①被告会社が労働安全衛生法に違反して、同法に定められた安全管理者、衛生管理者等の選任や安全委員会、衛生委員会の設置をしていない状態を是正しなかった点、②平成11年9月ころに稲城工場内で労災事故が発生した後ですら、A川所長、E田工場長、あるいはD原副工場長などに対し、安全教育の実施、適切な人員配置等安全管理体制の整備を指示することはなかった点で、「一郎に対する安全確保のための配慮が欠けていたことについて過失があるというべきである。」と判断しています。
  この事件では、会社に対する損害賠償請求の根拠条文として、商法261条3項、78条2項、民法44条があげられていますが、これらの条文は現在では存在しません。商法261条3項は現行の会社法350条に、商法78条2項は現行会社法600条に、民法44条は現行の一般社団及び一般財団法人に関する法律78条に相当します。
  なお、この件では、会社と代表取締役社長に対して、安全管理者の選任をしなかったことについて、平成13年8月2日立川簡易裁判所により、罰金刑が科されています。
 この事例は、機械の取扱いについての安全教育が実施されていないことを会社の安全配慮義務違反(過失)の大きな要素としているものです。


社労士
 
以上の判例のほか、*産業用ロボットとは  *産業用ロボットの危険の防止  *産業用ロボットに係る規制改革と施行通達の一部改正  *労働者死傷病報告  *災害時監督  *指導票   *機械災害と安全配慮義務
についても解説しておりますので労働安全衛生広報の2015年5月15日号をご覧になっていただければと思います。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和




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病院清掃で発生した針刺し事故

2015.06.28.Sun.15:29
社労士

 連載している労働安全衛生広報の2015年4月15日号、「病院清掃で発生した針刺し事故」を取り上げています。事案は、、病院から清掃を委託されているビルメンテナンス業の清掃員が感染性廃棄物の収集を行い、一時集積場へ運搬するため病院の廊下をゴミ袋を手に持ち歩いていたところ、ゴミ袋の中に使用済の注射針が混入していて、ゴミ袋の下部から注射針が突き出ていたため針で左足下腿部を刺したものです。
この中では
  *病院清掃における針刺し事故
 *医療関連サービスマーク制度
 *療養補償給付請求書
 *災害時監督
 *指導票
 *医療従事者に対する安全配慮義務
等について解説をしてます。

 今回は医療従事者に対する安全配慮義務についての判例をいくつか紹介していますが、今回はこの中から、口傷によるC型肝炎にかかる判例を紹介します。


弁護士

 看護専門学校准看護科に通学しながら病院の看護助手として勤務していた労働者が、主任看護師から指示されて患者の抑制作業の補助をさせたことについて安全配慮義務違反があると判断された事例があります(大阪地判平16.4.12判例タイムズ1168号173頁)。これは、脳内出血を発症して救急搬送されて来た男性患者がせん妄状態に陥ってベッド上で激しく暴れたために、主任看護師の指示に基づいてその患者を押さえつける作業(抑制作業)をしたところ、患者に左前腕部を噛まれ出血したという事実関係ですが、その患者がC型肝炎に感染していたために、当該労働者はその約半年後に劇症肝炎・C型肝炎を発症し、その1年後には敗血症を発症してしまったという事件です。裁判所は、咬傷とC型肝炎発症、劇症肝炎発症、敗血症発症との因果関係を認め、さらに、①看護師・准看護師等以外の知識・経験を有しない被用者に抑制作業の補助を命ずるに当たっては、あらかじめ抑制の方法や基本的注意事項を説明するなどの教育をする義務があり、②抑制作業に習熟していない無資格者に対しては抑制作業の伴う危険が大きい患者の抑制作業の補助を命ずるべきではない、と判断しています。その上で、この事例の場合、せん妄状態に陥ってベッド上で暴れている患者に対する抑制作業の補助を命ずるべきではなかったとしています。

社労士
 
 以上の判例のほか、*病院清掃における針刺し事故  *医療関連サービスマーク制度  *療養補償給付請求書   *災害時監督   *指導票  *医療従事者に対する安全配慮義務についても解説しておりますので、労働安全衛生広報の2015年4月15日号
をご覧になっていただければと思います。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



無期転換ルールの特例②

2015.06.27.Sat.23:39
社労士

 労働基準広報の2015年7月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で11回となります。今回は、無期転換ルールの特例をめぐる質問に答えています。

 質問は、以下の3問です。

① 会社で、人事労務担当の部署におります。当社は、有期雇用労働者の比率が高く、さらにその中に高齢者が多くおりますので、労務管理には何かと気を使っております。
労働契約法の改正により「無期転換ルール」が平成25年4月から施行されていますが、当社では正社員(無期雇用)の定年を60歳とし、その後は嘱託社員として1年の有期雇用にして65歳まで更新しております。また、65歳を超えても本人が継続することを希望し、その人の能力やこれまでの勤務状況を見て会社が大丈夫だと判断する場合には、有期雇用を更新しております。ただ、65歳を超えると、通算5年を超えることになりますので、無期転換申込権が当該労働者に発生することになります。そうすると、労務管理が煩雑になることが予想され、困っておりました。この度、無期転換ルールの特例に継続雇用の高齢者が対象になったと聞いております。これにより労務管理もやりやすくなると期待しております。この特例についてのポイントと利用する際に気を付けなければならないことを教えて下さい。

② 当社は、有期特措法の継続雇用の高齢者の特例の計画認定の申請を検討しています。その場合は、第二種計画認定の申請書を作成して、労働局に提出しなければならないのですが、初めてのことなので、すんなり認定してもらえる申請書を作成できるか心配しています。第二種計画認定申請書を作成・提出する際に気を付けなければならないことを教えて下さい。

③ 当社は、正社員(無期雇用)を60歳定年として、その後は本人の希望があれば1年の有期の嘱託社員として、65才までは契約を更新しております。その後も本人の希望があれば、その人の労働能力を見て、契約を更新していましたが、平成25年4月に改正労働契約法は施行され、「無期転換ルール」ができたため、無期転換申込権を行使して無期雇用となる者が出てくることが予想されました。そうすると65歳を超えた者が無期雇用になり、容易に解雇もできなくなるため、やむなくこのような者に対して、68歳で第二の定年とするという就業規則を作成しました。ただ、高齢者の労働能力は個人差が著しく中には、70歳を超えても働いて欲しい人もおります。有期特措法では、第2種計画の認定を受ければ、この個人差を考慮して雇用の継続の可否を判断することができますので、第二定年を廃止する内容で就業規則を変更したいと思います。この就業規則の変更について、就業規則の不利益変更の点で問題にならないかご教授ください。


今回は、③で第二定年を規定した就業規則の変更等の問題について検討した箇所を紹介することにします。



*第二定年


弁護士

 「第二定年」の問題が生ずるのはどんな場合ですか?


社労士 

 労働者が一度定年退職して、高年法による雇用継続措置として有期労働契約を締結してこの有期労働契約が通算5年を超えて継続した場合に、労働者が無期転換申込権を行使して無期労働契約となったというケースです。ご質問の会社も、無期雇用になった場合を想定して規定を定めています。


弁護士  

就業規則に定められた第二定年を廃止することは、就業規則による労働条件の不利益変更ではないと考えられます。第二定年は、その年齢に達した場合には一律に労働契約を終了するということですので、当該規定を削除等してその制度を廃止することは、「その年齢に達しても当然には労働契約終了とはならない」という内容の就業規則にするということになります。つまり、第二定年の年齢となった労働者にもそれ以降の継続雇用が可能となることですから、労働者にとって有利な変更です。第二定年制度を廃止することは就業規則の変更ですが、労働者の同意(労契法8条)が得られるでしょうし、同意の有無にかかわらず就業規則の最低基準効(労契法12条)が働きます。



*労契法第19条の適用と上限年齢


社労士 

 なお、特例の認定を受けて、高齢労働者の能力を見て雇い止めも個別の高齢労働者ごとにできることになりますが、その場合でも注意しなければならないのは、雇止め法理(労契法19条)は適用されるということです。


弁護士  

 特例の認定を受けても、雇止めには客観的合理的理由と社会的相当性を必要としますので、契約期間満了時に使用者が自由に更新拒絶をできるようになるわけではありません。今回の継続雇用高年齢者の特例は、無期転換申込権を定める労契法18条の特例ですので、19条はそのまま適用されるのです。


社労士  

 では、特例の認定を受けた場合にも、更新の上限年齢を定めることは可能ですか?例えば、60歳が定年であるとして、定年後の継続雇用措置として1年間の有期労働契約を締結するが、上限を68歳までとした場合です。


弁護士  

 そのような規定の下で、会社の経済的事情あるいは労働者の体力や能力が低下しているという事情のない限りは68歳までは更新する取扱いであったというような場合には、多くの場合には、68歳まで雇用継続の合理的期待があると判断されるでしょう。トーホーサッシ事件(福岡地決平23.7.13労働判例1031号5頁)は、労働者の定年後は再雇用期間を6か月ごとの更新として雇用継続は最大65歳誕生日の前日までとするとの労働組合との確認書(企業外組合との間の当該労働者についての労働協約)の締結後に、従業員代表との間で定年後に雇用の継続をするかどうかの選別基準が定められたというケースで、当該労働者には65歳誕生日前日までの雇用継続の合理的期待があると判断され、当該労働者の就労状況がこれまでに比べて大きく衰えたとか経営状況が大きく変わったなどの事情もなく、雇止めに合理的な理由はないと判断されたものです(なお、この事件は、労使協定による継続雇用の選別基準の設定が認められていた時期の事例です)。この判例の理屈では、例えば、継続雇用の上限を68歳までと定めて実際に本人の希望や不都合のない限りは多くの労働者がその上限年齢まで継続雇用されていたという場合には、それまでの間に更新拒絶をするには、体力や能力の顕著な衰えとか会社の経営状況の悪化というような「客観的合理的理由」と「社会通念上の相当性」が必要でしょう。


社労士

 65歳までの継続雇用措置は高年齢者雇用確保措置の一つとして高年法上に規定されていますので、実際上は有期雇用の更新で65歳まで就労することが多いでしょうが、それを超えても就労する能力と体力をもっている労働者も、そのような労働者を必要とする使用者もいます。しかし、65歳を超えて就労する体力と能力を維持している労働者ばかりではありません。そこで、定年後には高年法に従って有期雇用を更新して65歳まで就労させ、さらに体力と能力や会社の経営状況によって個別的に判断するという制度も可能ですか?


弁護士 

 そのような制度も可能です。ただ、その場合でも労契法19条の雇止め法理が働くことがあります。65歳を超えた場合には個別的事情によって判断するという制度であっても、体力や能力が衰えておらず本人が継続雇用を希望する場合には更新がされていたという実態があれば、雇用の継続に合理的期待があると判断される場合も多いでしょう。しかし、65歳を超えて更新される労働者も相当数いたが希望しても更新されない労働者も相当数いて、「君はいつまでもいてくれよな」などという雇用継続の合理的期待をいだかせる言動もなかったとなれば、雇止め法理(労契法19条)の適用がないでしょう。


社労士 

 65歳を超える場合有期労働契約を更新するかどうかについて、体力や能力を個別的に判断するという制度であり、実際にそのように行われている場合には、雇用継続の合理的期待があるとは認められにくいということですね。


弁護士 

 雇用の継続への合理的期待があるとされる場合でも、体力や能力が低下したとか、会社の経営上人員整理をしなければならず、再雇用労働者を継続して雇用する余地がなくなったというような場合には、更新拒絶の客観的合理的理由と相当性があると判断されることが多いと思います。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

無期転換ルールの特例①

2015.06.27.Sat.23:17
社労士

 労働基準広報の2015年6月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で10回目となります。今回は、無期転換ルールの特例をめぐる質問に答えています。

 質問は、以下の2問です。

① 会社で、人事労務担当の部署におります。
労働契約法の改正により「無期転換ルール」が平成25年4月から施行されていますが、このルールの特例がいくつか設けられたと聞いております。「無期転換ルール」の施行は平成25年4月からですが、まだあまり時間がたっていないうちに特例が次々と出されたという印象を持っています。この特例を追いかけるのは結構大変です。現在までに設けられた特例についてその経過及びポイントを教えて下さい。

② 当社は、有期特措法の高度専門職に関する特例の計画認定の申請を検討しています。そこで、まず、高度専門職の特例についてご教授ください。また、労務管理上気を付けなければならないことも併せてご教授ください。

今回は、①で無期転換ルールの特例の種類と規定された経過について検討した箇所を紹介することにします。


*無期転換ルールの特例制定の経過

社労士  

 ご質問にあるように労働契約法の改正により「無期転換ルール」が平成25年4月から施行されていますが、平成25年12月13日に、議員立法で成立した「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(以下、この改正後のそれぞれの法律を「研究開発強化法」及び「任期法」という。)で規定する「大学等及び研究開発法人の研究者、教員等 に対する特例(以下、「大学特例」という。)が公布され、平成26年4月1日より施行されています。この特例を設けたのは、研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等の観点からとされています。      
  この大学特例は大学や研究機関と有期労働契約を締結した労働者、あるいは大学や研究機関と共同で行う研究開発に専ら従事する労働者が使用者(大学や研究機関には限られない)と有期労働契約を締結した場合に限定されていましたが、さらに、今度は平成26年11月28日に「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」(以下「有期特措法」という。)が公布され、本年4月1日から施行されています。この特例は、専門的知識等を有する有期雇用労働者等の能力の維持向上及び活用を通じ、その能力の有効な発揮と、活力ある社会の実現を目指す観点からとされています。


弁護士  

  確かに、平成25年4月に施行されてから短い期間でその特例ができていますね。現実に無期転換ルールが適用される事例が生ずるのは平成30年4月以降の場合が多いのに、大学特例ができたのは一部の大学で1年を契約期間とする非常勤講師を5年で無期転換申込権を発生させないために色々な動きをするところが出てきたということも関係がありそうですね。有期特措法にしても、このような特例を作るのであれば、本来は平成24年8月の労働契約法改正の際に議論されていてもおかしくなかった点ですね。


*無期転換ルール

社労士  

 ここで、無期転換ルールですが、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働  者の雇用の安定を図る観点から平成24年8月の労働契約法改正により定められたものです。内容は、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換するというものです(労働契約法第18条第1項)。


*大学等及び研究開発法人の研究者、教員等 に対する特例


弁護士   

 特例の第1として、研究開発強化法及び任期法による大学特例では、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等の特例の対象者については無期転換申込権発生までの期間が10年となります。同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で10年を超えて繰り返し更新された場合に、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換するというものです(第2図参照)。これは、労働契約法の無期転換申込権発生の要件としての有期労働契約の通算5年を、10年に延長したものです。しかし、これで「研究開発能力の強化及び教育研究の活性化」が図れるのか、多少疑問もあります。1年ごとに研究成果を検証して労働契約の更新をするかどうかを検討し成果が出れば契約期間満了で雇止めをしようとしていたところ、5年経過時にはその成果があと少しで出そうだけれど、さらにその研究者の雇用を継続すれば無期労働契約転換申込権が発生するために、雇止めの方向に働く事態を防止するために10年としたとも考えられます。



*特例の対象者


社労士  

 この特例の対象者は、以下のとおりです。①~④は研究開発強化法第15条の2第1項、⑤については任期法第7条第1項に規定されています。
① 科学技術に関する研究者などであって大学等を設置する者又は研究開発法人との間で有期労働契約を締結したもの
② 研究開発等に係る企画立案、資金の確保並びに知的財産権の取得及び活用その他の研究開発等に係る運営及び管理に係る業務(専門的な知識及び能力を必要とするものに限る。 以下「運営管理に係る業務」という。)に従事する者であって大学等を設置する者又は研究開発法人との間で有期労働契約を締結したもの
③ 大学等、研究開発法人及び試験研究機関等以外の者が大学等、研究開発法人又は試験研究機関等との協定その他の契約によりこれらと共同して行う研究開発等(以下「共同研究開発等」という。)の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者などであって当該大学等、研究開発法人又は試験研究機関等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
④ 共同研究開発等に係る運営管理に係る業務に専ら従事する者であって当該共同研究開発等を行う大学等、研究開発法人又は試験研究機関等以外の者との間で有期労働契約を締結したもの
⑤大学の教員等の任期に関する法律(任期法)に基づく任期の定めがある労働契約を締結した教員等


弁護士   

 この対象をよく見ると、大学や研究開発法人に有期雇用される研究職の労働者だけではなく、民間での研究機関に有期雇用される労働者でもこれにあたる場合もあるのですね。


社労士   

 そうですね。③④は、大学や研究開発法人と共同研究をする民間企業に有期雇用されている労働者が対象です。しかし、大学や研究開発法人と「共同研究開発等の業務に専ら従事する科学技術に関する研究者など」、「共同研究開発等に係る運営管理に係る業務に専ら従事する者」に限定されています。従って、民間企業の研究所に勤務する労働者が自分の所属する研究所の業務の傍ら大学や研究開発法人との共同研究をしているといった場合には、この特例にあたりません。研究者のほかに、「共同研究開発等に係る運営管理に係る業務」を行う労働者もこの特例にあたることがありますが、それは「専門的知識と能力を必要とするもの」に限られていますので、範囲はごく限られてくると思います。


弁護士  

 この特例の適用対象となると、1年ごとに期間を定めた労働契約を更新して11年目に入った場合にようやく無期転換申込権が発生するということなのですね。


社労士  

そうです。通常の「通算5年」が特例で「通算10年」となったのですから、通算の仕方やクーリング期間の取扱いについては、通常の場合と同じです。



*有期特措法による特例


弁護士   

 特例の第2として有期特措法による特例があります。
 これは、さらに、① 専門的知識等を有する有期雇用労働者(以下「高度専門職」という。)と、 ② 定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者(以下「継続雇用の高齢者」という。)があります。


社労士  

 これは、平成25年12月13日に公布された国家戦略特別区域法附則第2条で、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進を図る観点から、高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者等について、無期転換申込権発生までの期間の在り方等について検討を行って所要の法案の提出を目指す旨が規定されたことを受けて、策定されたものです。この特例は、高度専門職と継続雇用の高齢者を対象として、労働契約法18条の無期転換ルールの特別措置として制定された法律です。その趣旨は、「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者及び定年後引き続いて雇用される有期雇用労働者が、その能力を有効に発揮し、活力ある社会を実現できるよう、これらの有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する特別の措置が行われる場合に、無期転換ルールに関する特例を設けるものである」とされています(平成27年3月18日基発0318第1号)。


弁護士  

 「有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する特別の措置が行われる場合」に特例が適用となるということですね。ここが一つのポイントになりますね。



*指針


社労士  

 先ほど説明した通達の日付と同じ平成27年3月18日に、「高度な専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法施行規則」(労働省令35号)が公布され、有期特措法3条に基づく「事業主が行う特定有期雇用労働者の特性に応じた雇用管理に関する措置に関する基本的な指針」(厚生労働省告示69号)が出されています。この指針によれば、高度専門職については教育訓練に係る休暇の付与、教育訓練に係る時間確保の措置、教育訓練に係る費用の助成などの措置、継続雇用高齢者については高年齢者雇用推進者の選任、配置・職務・職場環境に関する配慮等の措置があげられています。


弁護士   

 この特別措置は、そのような雇用管理に関する特別な措置をとる代わりに、有期雇用労働者が通算5年を超えて同一の使用者に雇用された場合に発生する労働契約法18条の無期転換申込権の発生を、延長するものですね。


社労士  

 そうともいえます。高度専門職についてはその専門的知識を必要とする業務(5年を超える一定期間内に完了することが予定されているもの)に就いている間(上限は10年)は無期転換申込権を発生しないこととし、継続雇用の高齢者に就いては定年後引き続き雇用されている期間は無期転換申込権を発生しないこととしています。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

L館事件最高裁判決(セクハラ事案)

2015.06.27.Sat.22:42
社労士

 労働基準広報の2015年5月1日号の
 
     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~


は、今回で9回目となります。今回は、セクハラ発言による降格に係る最高裁判決をめぐる質問に答えています。

 質問は、以下のとおりです。

人事労務担当役員です。 
わが社は、以前セクハラをした労働者を処分したことがあります。その時行った処分を不服とする労働者ともめたことがありました。それ以来、セクハラ関連については、国や判例の動向を注意しています。この度、セクハラ発言を行った労働者を懲戒処分と降格にした事案の妥当性に関する注目すべき判決がでたと聞いております。1審、2審と判断が異なり、最高裁が最終判断したということですが、それぞれのポイントをご教授ください。またこの判例を踏まえて会社が、注意しなければならない事項をご教授ください。


今回は、事件の概要と1審・控訴審・最高裁の判断の箇所を紹介することにします。

*L館事件最高裁判決


社労士  

L館事件(最1小判平27.2.26裁判所ウェブサイト掲載)では、セクハラの行為者への懲戒処分と降格処分の効力が争われました。セクハラ行為をした労働者(管理職)2人を出勤停止30日と10日とし、この懲戒処分を理由として、資格等級を課長代理職(M0)から係長職(S2)に1等級降格したという事件でした。


*1審・控訴審・最高裁の判断


弁護士

1審(大阪地判平25.9.6労働判例1099号53頁)でも控訴審(大阪高判平26.3.28労働判例1099号33頁)でも、セクハラ行為があり、懲戒事由には該当するとの判断をしたのですが、1審は処分も相当で降格も有効であると判断したのに対し、控訴審ではこの処分は重過ぎて社会通念上相当性があるとは認められず無効であり、これを理由とする降格も無効であると判断しました。最高裁は、控訴審判決の事実認定を前提としながら、懲戒処分と降格処分を有効と判断しました。


*事件の事実関係


社労士  

 この事件は、女性労働者が不愉快になるようなセクハラ発言を繰り返したという、いわゆる「環境型セクハラ」にあたるものですね。事実関係はどのようなものだったのですか?


弁護士  

 まず、会社Yは、大阪市が出資する第3セクターとして水族館とこれに隣接する商業施設の運営等を行っている会社で、処分をされた労働者2名のうち1名X1は営業部サービスチームのマネージャーの地位にあり、資格等級はM0(課長代理)の等級です。もう1人のX2は、営業部課長代理の地位にあり、資格等級ではやはりM0の等級です。両方とも営業部に所属し、X1がサービスチームの責任者、X2がサービスチームの課長代理の1人でした。営業部の事務室では、合計20数名の労働者が就労しており、今回被害者となった女性労働者Aは売上管理等の担当で、営業部事務室の一部を壁で仕切った精算室で主任C(男性)とともに勤務していました。また、女性労働者Bは、拾得物担当で、営業部の事務室内に勤務していました。AはD社から派遣されている派遣労働者、BはY会社の営業部事務室内でD社が請け負った作業をするD社の従業員です。つまり、A、Bともに、職場における人間関係やD社の立場を考えると、セクハラ行為があっても抗議や被害の申告をしづらい立場にあったということができます。
他方、Y会社の従業員の過半数は女性で、来館者も約6割が女性であり、Y会社は関原の防止等に関する研修会を実施してこれに全従業員の参加を義務付け、平成22年11月1日には「セクシャルハラスメントは許しません!!」と題する文書(以下「セクハラ禁止文書」という)を作成して従業員に配布し、職場に掲示するなどの取り組みを行っていました。X1、X2ともに、研修を受けただけでなく、管理職としてセクハラ防止のために部下職位を指導すべき立場にあったと判断されています。なお、X2は過去に女性従業員に対する言動について苦情が出されていて、営業部に異動になった当初、上司(副部長)から女性従業員に対する言動に気をつけるよう注意をされていました。


*会社の対応


社労士  

 会社としては、セクハラ防止のためになすべきことをなしていたといえますね。


弁護士  

それに、Y会社の事後対応も妥当なものだったと思います。AがAとBがY会社の営業部副部長に相談し、営業部副部長はABの氏名を明らかにすることなくセクハラ相談窓口担当者に相談し、担当者は直接被害者から話を聞かせてほしいと副部長に告げて調査を開始して事情を聴取してメモを作成するのを依頼したのちにABの派遣元・請負先であるD社の派遣会社担当者を訪問して調査をしています。これも妥当なところと思います。


*セクハラ発言


社労士  

 この事件では、身体を触ったり、性的関係を求めたりするような行為はなかったということですが、そうすると問題はセクハラ発言ということになりますね。


弁護士  

 そうです。また、「対価型」もありません。「性的な言動」のなかでも、言葉によるものです。控訴審判決では、Xらの行動について、「いずれもAとは仲が良く、本件各懲戒該当行為のような言動もAから許されていると勘違いをした結果、それらの行為に及んだものと認められる」と判断されていますが、言葉の内容的にはけっこうきわどいものでした。その多くは、Aが1人で精算室いるときにAに対して述べられています。期間は1年余にわたっています。X1の発言については、「きわめて露骨で卑猥な発言等を繰り返すなどした」と評価されています。X2の発言についても、「従業員Aの年齢や従業員Aらがいまだ結婚をしていないことなどを殊更に取り上げて著しく侮蔑的ないい下品な言辞で同人らを侮辱し又は困惑させる発言を繰り返し」たと評価されています。


社労士  

具体的にはどのような発言だったのですか?


弁護士 

 最高裁は、判決文の別表で、控訴審で事実認定されたXらの発言を取り出していますが、X1の発言として、主なものをあげると、次のようなものです。
    「(X1の)不貞相手の年齢や職業の話をし、不貞相手とその夫との間の性生活の話をした」
    「『俺のん、でかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はその方がいいんかなあ。』
    『(X1)の夫婦間はもう何年もセックスレスやねん。』『でも俺の性欲は年々増すねん。なんでやろうな。』『でも家庭サービスはきちんとやってるねん』『切り替えはしているから。』と言った。」
    「不貞相手が自動車で迎えに来ていたという話をする中で、『この前、カー何々してん』と言い、従業員Aに『何々』のところをわざと言わせようとした。」
    X2の発言の主なものとしては、次のような発言です。
  「従業員Aに対し、『いくつになったん。』、『もうそんな歳になったん。結婚も線でこんなところで何してんの。親なくで。』と言った。」
    「従業員Aに対し、C(精算室の就任で男性)もいた精算室内で、『30歳になっても親のすねかじりながらのうのうと生きていけるから、仕事やめられていないないなあ。うらやましいわ。』と言った。
    「従業員Aに対し、『毎月、収入どれくらい。時給いくらなん。社員はもっとあるで。』、『お給料全部使うやろ。足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで。したらええやん。』・・・などと繰り返し言った。」
    「従業員A及び従業員Bに対し、具体的な男性従業員の名前を複数挙げて、『この中で誰か1人と絶対結婚しなあかんとしたら、誰を選ぶ。』、『地球に2人しかいなかったらどうする。』と聞いた。」


*控訴審の判断の理由


社労士  

 これは環境型セクハラにあたりますね。言葉のセクハラとしても重い部類ではないでしょうか。X1の発言は露骨な性的発言ですし、X2の発言は「女性は結婚をすべきもの」との価値観を押し付けているものです。どうして控訴審では懲戒処分が無効と判断されたのですか?


弁護士  

 控訴審でも、これらの行為は懲戒事由にあたると判断されたのですが、懲戒解雇の次に重い出勤停止処分では処分が重すぎるという判断です。その理由としては、①Xらが従業員Aから明確な拒否の姿勢を示されておらず、上記のような言動も従業員Aから許されていると誤信していたこと(「誤信」)、②Xらが懲戒を受ける前にセクハラを理由とする懲戒に関するY会社の具体的な方針を認識する機会がなかったこと(「方針の認識」)、③上記の行為(他の従業員の面前で行われた行為もある)について事前に警告や注意等を受けていなかったこと(「事前警告」)などからです。


*最高裁の判断


社労士 

 明確な拒否の姿勢を示されていなかったといっても、AやBは派遣労働者や請負会社の労働者という、いわば弱い立場にあった労働者でしょう。それで明確な拒否の態度を示せなかったということも考えられますね。


弁護士  

 そうです。最高裁は、「職場におけるセクハラ行為については、被害者が内心でこれに著しい不快感や嫌悪感等をいだきながらも、職場の人間関係の悪化等を懸念して、加害者に対する抗議や抵抗ないし会社に対する被害の申告を差し控えたりちゅうちょしたりすることが少なくないと考えられる」と判断しています。また、本件で問題となった発言内容から見て、仮に「誤信」があったとしても、いやがるのは当然のことと考えるべき内容だと思います。「誤信」自体がおかしいとも考えられます。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

移動式クレーンのジブが高圧電線に触れ感電

2015.06.27.Sat.22:07
社労士 

 連載している労働安全衛生広報の2015年6月15日号、「アーク溶接作業者に発症したじん肺」を取り上げています。事案は、鉄筋コンクリート造の二階建て店舗兼住宅の建設現場で、鉄筋の束の運搬を移動式クレーンを用いて行っていたところ、移動式クレーンのジブが高圧送電線に触れたため作業を行っていた被災者が感電したものです。

この中では
*移動式クレーン作業における感電の危険性
*高圧送電線に近接する場所での感電防止措置
*労働者死傷病報告
*「移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電災害の防止対策について」(基発759号通達)
*是正勧告書
*電気災害の刑事事件と民事事件
等について解説をしてます。

 今回はこの中から、クレーンの高圧電線接触に関する民事事件の判例の一部を紹介します。


*平田重機事件

弁護士
  クレーンが高圧電線に接触して労働者が感電したという事件としては、平田重機事件があります(大阪地判昭62.11.27交通事故民事判例集20巻6号1522頁)。原告となったのは、ガソリンスタンドの給油設備の屋根の新築工事のうち鉄骨組立工事を下請けしていた個人事業者Aの労働者です。被告となったのは、この個人事業者Aではなく、クレーン車による資材の移動・運搬作業等を業とするやはり個人事業者Bです(これも下請と思われますが、判決にはその点の明示がありません)。原告労働者は、トラックに積載されている鋼材を、個人事業者Bの従業員であるCが操縦するクレーン車のクレーンによって所定の位置に吊り下ろす作業に従事していました。この労働者は、クレーンのワイヤーロープで吊りあげられた鋼材が横揺れしてガソリンスタンドの給油施設に触れることのないように手で鋼材を押さえていたのですが、クレーンのブームの旋回によって作業現場上空の高圧電線の至近距離に接近したために放電が生じて電流がワイヤーロープを伝って鋼材に流れ、鋼材を押さえていた原告労働者が両手両足に電撃による傷害を負ったというものです。この事件では原告労働者は玉掛係で、クレーンの操縦者Bに合図を送ってクレーン操作を誘導する作業にも従事していたのですが、現場上空に電線が架設されていることに気づかず、合図を送っていました。しかし、電線に気づかずに合図を送ってきた労働者にクレーン操縦をしていたCが警告や確認もしなかった点に過失があるとされ、個人事業者Bが民法715条の使用者責任を負うとされましたが、6割の過失相殺がされています。


社労士


 以上の他、 *移動式クレーン作業における感電の危険性  *高圧送電線に近接する場所での感電防止措置  *労働者死傷病報告  *「移動式クレーン等の送配電線類への接触による感電災害の防止対策について」(基発759号通達)  *是正勧告書
*電気災害の刑事事件と民事事件 についても解説しておりますので労働安全衛生広報の2015年6月15日号をご覧になっていただければと思います。



紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



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