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ブラックバイト②

2016.12.29.Thu.02:11
社労士

労働基準広報の2016年3月1日号の

     弁護士&社労士がズバリ解決!
                   ~労働問題の「今」~

ですが、ブラックバイトについての下記の3つの質問に答えています。

① アパレルメーカーの販売部門の統括責任者です。当社は販売部門の社員に社員割引で自社製品を買わせて、それを着用して当社の製品販売を行わせております。また、大学生等のアルバイトも多いのですが、同様に製品の買い取りをさせています。今回ある店舗で、社員の店長が学生アルバイトに買い取りノルマを課して無理やり高額の製品を買わせたことでトラブルとなりました。昨今ブラックバイトが問題となっていて、その一形態に自社製品を無理に買わせるということがありました。自腹購入は、社員割引があるので、喜んでいる社員もいますが、学生アルバイトに自社製品の購入させるのをやめた方がよいのでしょうか?自腹購入はどこまでであれば許されるのか、ご教授ください。

② 当社は比較的高級な和食レストランのチェーン店を運営しております。各店舗では、学生アルバイトも多く働いております。食器も高価なものが多いので、取扱いに気を付けるように注意をしておりますが、よく破損します。少し注意をしてもらうためにも、これから5枚以上割ったら5000円の「罰金」を支払ってもらうようなルールを作りたいと思います。昨今学生アルバイトの労働条件については、取り締まりが厳しくなったと聞いております。このようなルールをつくることは問題となるのでしょうか?

③ 当社は、学習塾を複数経営しております。塾では集団指導も個別指導も実施しております。先日、その中の一つの塾から、複数の学生アルバイトと賃金の対象となる労働時間をめぐってトラブルが発生しているとの連絡を受けました。具体的には、授業記録を作成した時間や事前の約束なく突然訪ねてきた父母への対応時間分の賃金の支払いをしなかったというものです。講師の労務管理については、本社も指導していますが、基本的には塾長に任せております。今後、本社から、他の塾長たちも含めて賃金やその前提となる労働時間についての指導をしなければと思っております。その際に、留意すべきことをご教授ください。


このうち、今回は、①の質問の箇所を紹介します。

*全額払いの原則


社労士 


 ご質問の自腹購入ですが、学生アルバイトが、自らの本来の自由意思で購入する場合には問題にならないと思いますが、無理やり買わされたとなれば問題ですし、労働者の本来の自由な意思に基づかないで、その代金を給与から差し引くことは、労基法24条の全額払いの原則に反することになりますね。


弁護士

 労働基準法24条は、賃金の全額払いを定めています。これは、仮に労働者に使用者に支払うべき債務があったとしても、使用者側から賃金と相殺してはいけないということでもあります(関西精機事件、最二小判昭31.11.2民集10巻11号1413頁、日本勧業経済界事件、最大判昭36.5.31民集15巻5号1482頁)。労働者の生活の基盤である賃金を確実に受給させることが全額払いの原則の趣旨だからです。そうでなければ、労働者が支払うべき義務があるかどうか争いがある場合にまで、使用者が勝手に賃金から控除して強制的に支払わせることが可能になってしまうからです。


*労働者の自由意思に基づく控除


社労士 


 賃金からの控除が本来の労働者の自由意思に基づくものであれば許容されていますね。


弁護士 

 労働者が使用者に負担する債務を賃金から控除することは、労働者と使用者の合意があれば可能との考え方もありますが、労使の力関係上、労働者がやむなく合意をするという場合もあります。そこで、労働者との合意に基づく相殺の場合、単に労働者との合意があっただけで賃金からの控除が承認されるわけではなく、その同意が「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認められるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき」にのみ許容され、その「同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ客観的に行われなければならない」とされています(日新製鋼事件、最二小判平2.11.26労働判例584号6頁)。なお、この判例については、全額払いを定める労基法に違反する以上は、いくら労働者の合意があっても、一方的控除はできないとの有力な反対説があります(菅野和夫『労働法第10版』305頁)。ご質問の事例では、判例に従えば労働者の自由意思による合意があれば、賃金からの差し引きは可能となりますが、「買い取りノルマを課して無理やり高額の製品を買わせた」ということであれば、そもそもその購入契約の効力が問題となりますし、賃金からの差し引きは、労基法24条違反となる可能性が高いでしょう。


*自社製品の購入の問題


社労士 

 「販売部門の社員に社員割引で自社製品を買わせて、それを着用して当社の製品販売を行わせ」ている点はどうですか?


弁護士  

自社製品を労働者に買わせていることについてですが、さきほどの相殺の場合と同様の枠組みが適用されると思います。つまり、労働者の本来の自由意思が要求され、「労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する」ことが必要だということです。接客には自社製品を着用することが義務付けられているのであれば、その購入義務が労働者にあるということですが、そうなると、自社製品の買い取りが労働者の本来の自由意思に基づくものかどうかが問題となります。制服とは異なり、当該商品に汎用性があること(権利の側面でも実際の側面でも職場外での着用も可能であること)、社員割引で安価に取得できること、もちろん返還の義務もないことなどから、あらかじめこれを合意して入社をしたのであれば、自由意思に基づくことを認定する合理的客観的状況が一応はあるとはいえるでしょう。しかし、それが賃金のかなりの部分を占めてしまい、労働者の経済生活を脅かすようなことがあれば、やはり自由意思に基づくものかどうかに疑問が出てきます。一定のノルマを課して、それに達しない労働者に購入を義務付ける旨の就業規則規定があったとすれば、それは合理性を欠き、無効になると思われます(労契法7条)。また、これを定める労働契約条項があっても、その効力には疑問があります。これらのノルマを課してそれに達しない労働者に購入を義務付ける条項や規定は、本来使用者が負担すべきリスクを労働者に転嫁するものだからです。


*アルバイトの場合


社労士 

アルバイトの場合にはどうですか?


弁護士 

アルバイトの場合も枠組みとしては同様と思います。自社製品を安く買えるので喜んでいるアルバイトがいるかもしれませんが、逆に必要もない商品を無理やり買わされて困っているアルバイトもいるのではないでしょうか。ですから、使用者の圧力の下で無理やり買わせることは問題です。例えば、「自社製品を買わない」ことを理由とする解雇はできないでしょう。そうすると、「買わなければ解雇する」と言って無理やり買わせた場合、購入の意思表示が詐欺または脅迫によるものとなる可能性もあります(民法96条)。また、アルバイトであれば、賃金が正社員と比べて少額でしょうから、賃金のうちどれだけの部分が自社製品の購入に充てられるかもまた、「自由な意思に基づく」合意かどうかを判断する要素でもあるでしょう。


社労士 

自腹購入が全面的に否定されるわけではありませんが、労働者の自由な意思とこれを根拠づける合理的客観的事情が必要ということですね。学生アルバイトに自社製品の購入を義務付けることをどうするかについては、上記のリスクを十分踏まえて慎重に判断することが必要ですね。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和






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