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サイロ内の砂崩壊で被災した派遣労働者

2016.12.31.Sat.09:20
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2015年11月15日号、「サイロ内の砂崩壊で被災した派遣労働者」を取り上げています。事案は、被災者(派遣労働者)が、生コンクリート(以下「生コン」という。)製造プラントのサイロ内で砂を掻き落とす作業をしていたところ、堆積していた砂が突然崩壊したため落下し、砂に埋まり、肋骨を骨折したものです。

この中では
  *サイロ内の砂の崩壊災害
  *派遣の場合の安衛法の適用
  *災害時監督
  *是正勧告書
  *派遣労働者に対する安全配慮義務

等について解説をしてます。

 
 その中で、今回は、派遣労働者に対する安全配慮義務を紹介します。


弁護士


  派遣労働者を雇用するのは派遣元です。従って、派遣元は労働契約の当事者として派遣労働者に対して安全配慮義務を負います(労働契約法5条)。
 しかし、安全配慮義務を負うのは、労働契約の当事者としての使用者だけではありません。安全配慮義務は、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務」(陸上自衛隊八戸車両整備工場事件、最3小判昭50.2.25労働判例222号13頁)ですので、労働契約の当事者としての使用者に限定されません。下請会社の労働者に対する元請会社の安全配慮義務も認められています(大石塗装・鹿島建設事件、最1小判昭55.12.18労働判例359号58頁)。
派遣労働の場は、指揮命令をするのは派遣先ですし、就労場所の施設の管理をするのも派遣先です。前述したように、労働者が就労するにあたっての危険防止措置の義務のあるのは派遣先です。従って、派遣労働者の場合、派遣先が安全配慮義務を負うことになります。
 では、派遣元は安全配慮義務を負わないのでしょうか。そうではありません。
建設工事で地上約8メートルの足場から地上に転落した障害を負った労働者が元請会社、下請会社、孫請会社(派遣先)、派遣元会社(一次派遣先)、直接の使用者(一次派遣元)に対して損害賠償を請求した事件で、元請会社、孫請会社(派遣先)、派遣元会社(一次派遣先)、直接の使用者(一次派遣元)の安全配慮義務違反があるとして、損害賠償責任が認められた事件があります(エム・テックほか事件、高松高判平21.9.15労働判例993号36頁)。
 また、偽装請負(実態は派遣であるが法形式は請負の形態をとっていた)における請負人(派遣元)の労働者が、注文主企業(実態は派遣先)の指揮命令下で就労していた際、過重な労働によってうつ病を発症し、これが原因で自殺したという事件について、派遣先会社には、労働者の「業務の実情を把握し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う」とし、派遣先会社に代わって当該労働者の業務上の指揮監督権限を有する派遣先会社の従業員であり当該労働者を指揮命令していた上司(チーフ)には、過重な労働等が行われることを放置し、この注意義務に違反した点に過失があると判断し、派遣先会社には民法715条の使用者責任があるとしています。また、この判決は、派遣元会社については、「当該派遣労働者の就業の状況を常に把握し、過重な業務等が行われるおそれがあるときにはその差し止めあるいは是正を受役務者(注 派遣先のこと)に求め、また、必要に応じて当該派遣労働者についての労働者派遣を停止するなどして、派遣労働者が過重な業務に従事することなどにより心身の健康を損うことを予防する注意義務を負う」とし、この注意義務違反があったと判断しています(アテスト(ニコン熊谷製作所)事件、東京高判平21.7.28労働判例990号50頁)。この事件の一審(東京地判平17.3.31労働判例894号21頁)では、安全配慮義務違反であると同時に不法行為でもあると判断していますが、控訴審では不法行為であると判断されていて、安全配慮義務違反は判断されていません。
 これらの判例からは、労働者派遣の場合、安全配慮義務や注意義務は、派遣元にも派遣先にもあり、しかし、その内容がそれぞれの法律関係を踏まえて派遣元と派遣先では安全配慮義務や注意義務の内容が異なり、双方に安全配慮義務や注意義務の違反がありうることがわかります。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

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