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寄宿舎火災で5名負傷

2016.12.31.Sat.09:39
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2015年12月15日号、「寄宿舎火災で5名負傷」を取り上げています。事案は、土木工事業者の事業場に附属する2階建ての寄宿舎で、夜間火災が発生し、逃げようとした労働者4名が火の粉を浴びて火傷し、また、逃げるため2階から飛び降りた労働者1名が足を骨折したものです。

この中では
  *労働者死傷病報告
  *重大災害
  *災害調査
  *是正勧告書
  *望ましい建設業附属寄宿舎に関するガイドライン
  *寄宿舎火災の刑事責任と民事責任

等について解説をしてます。

 
 今回は、その中で寄宿舎火災の刑事責任の部分を紹介します。


弁護士


この建設業附属寄宿舎規程は、火災などの防止のための措置義務と、火災などが発生した場合の被害を防止するための措置義務を規定していますので、現実に労働者等に被害が発生した場合には、この違反が業務上過失致死罪(刑法211条1項)の「過失」の内容となることがあります。
 建設会社の作業員用宿舎で深夜に出火し、この宿舎の2階で就寝中の作業員8名が焼死したという事案について、会社が労基法違反に問われ、代表取締役(宿舎の管理統轄者)及び取締役工事総務部長兼第一工事部長(宿舎の防火及び寄宿労働者の管理全般の担当者)がそれぞれ労基法違反及び業務上過失致死に問われた事件で、会社に罰金刑を科し、代表取締役及び取締役に禁固刑を科した判決があります(甲野組事件、横浜地判平7.10.30判例時報1575号151頁)。
 この事件では、代表取締役及び取締役においては、①この宿舎の2階部分について、「適正に配置され、かつ容易に屋外の安全な場所に通じる2以上の避難階段を設けず」(建設業附属寄宿舎規程8条1項後段)、代表取締役においては、さらに②「火災その他非常の場合、寄宿する者にこれをすみやかに知らせるための警鐘、非常ベル、サイレンその他の警報装置を設けなければならないのに、これを設けなかった」(建設業附属寄宿舎規程11条)点で労基法96条に違反し、119条1号に該当するとされています。また会社は、121条1項の両罰規定により処罰をされています。
 他方、業務上過失致死における「過失」の内容としては、「宿舎2階所室及び廊下部分につき、避難階段、窓及び自動火災報知機等必要な構造、設備を設置しないまま、漫然、同宿舎2階居室部分に労働者を寄宿させ続けた」点をあげています。
この判決では、代表取締役や取締役には、「適正に配置され、かつ、容易に屋外の安全な場所に通じる2以上の避難階段、外気と有効に通じる窓及び自動火災報知機等必要な構造及び設備を設置し、これを有効なものとして維持管理するなどして、出火した場合、早期にこれを寄宿労働者に覚知せしめ、同人らが安全な場所に避難できるよう万全の措置を講ずるか、同宿舎2階居室部分に寄宿する労働者を同宿舎3階に移動させるなどして、同宿舎2階居室部分に寄宿させないようにし、もって火災発生時における寄宿労働者の生命身体を安全に確保すべき業務上の注意義務」があったのにこれを怠ったとしているのです。
ここでは、労基法96条における措置義務(建設業附属寄宿舎規程8条、11条)が、「業務上過失」における注意義務の内容となっていることがわかります。これは、建設業附属寄宿舎規程が寄宿舎における災害を事前に防止するため、予想される危険を除去するために事業者に措置義務を課しているからです。

 紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和


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