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研削といしの破裂で被災した外国人留学生

2016.12.31.Sat.10:37
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年7月15日号、「研削砥石の破裂で被災した外国人留学生」を取り上げています。事案は、被災者が双頭グラインダーを使用して水道用仕切弁の研磨をしていたところ、回転中の研削砥石が破裂し、その破片が被災者の右腕と右手第5指に当たり、右腕と右指第5指を負傷したものです。

この中では
  *災害時監督
  *労働者死傷病報告
  *是正勧告書
  *外国人留学生を雇用する場合の留意点
  *外国人に対する労基法、安衛法、労働契約法などの適用
  *外国人に対する労災保険法の適用
  *損害賠償責任
等について解説をしてます。

 
 今回は、外国人留学生の就労及び労働災害をめぐる問題の部分を紹介します。


弁護士


 (1)外国人留学生の就労
 外国人が日本に留学する場合、日本において本来活動できるのは、大学等で教育を受けることだけです(入管法19条1項、別表第1の四)が、法務大臣の許可を受けた場合にはその資格外の活動ができるという仕組みになっています(入管法19条2項)。従って、留学生が賃金を得て就労する場合(「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」となる。入管法19条1項2号にあたる。)には、法務大臣の許可が必要です(入管法19条2項)。この許可は、留学生の本来の目的である教育を受ける「活動の遂行を阻害しない範囲内」で認められますが、留学生の場合には、その趣旨から、1週について28時間以内の就労が認められています(入管法施行規則19条5項1項)。ただし、就労先が風俗営業などは除外されますし、就労が可能な期間は教育期間に在籍中に限られます。この許可は包括的許可ですから、就労先が決まっていなくても、あらかじめ資格外活動許可申請をして許可を受けていれば、就労しようとする都度の個別的申請を必要としません。
 留学生がこの許可を受けないで就労している場合には、不法就労となります。そして、その不法就労の外国人を雇用した使用者は、不法就労助長罪に問われることになります(入管法73条の2第1項1号)。

(2)外国人に対する労基法、安衛法、労働契約法などの適用
 外国人留学生が日本で就労する場合、日本の労基法、労組法、労契法等の労働関係法規が適用されます。たとえ留学生が資格外活動許可を受けていなくても、あるいは資格外活動の要件である1週28時間を超えて就労していたとしても、これらは適用されます。
  刑法では属地主義の原則(刑法1条)がとられており、この原則は他の刑罰法規にも適用されます(刑法8条)。労基法は日本における事業を単位として適用されますので、日本国内の事業であれば、労基法の刑事法としての側面は適用されます。行政取締法としての側面でも同様です。ですから、日本国内に「事業」がある場合には、労基法や労働安全衛生法の刑事罰規定、行政取締規定は適用になります(厚生労働省労働基準局編『平成22年版労働基準法下』1043頁)。安衛法の適用もありますので、外国人留学生が就労する場合であっても、危険防止措置をとることや特別教育の実施は当然のことです。
日本人や日本の法人と外国人との間の民事上の法律関係にどの国の法律が適用されるかを定める法律として、「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」)がありますが、そこでは、契約などの法律行為については、どの国の法律を適用するかを当事者が合意によって選択できるという原則があります(通則法7条)。本件では日本の法律の選択があったと考えてよいでしょう。なお、この選択がない場合には、「当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」(「最密接地法」)が適用されます(通則法8条)。労働契約で「最密接地法」と考えられるのは、労務を提供する地の法律です(通則法12条3項)。ですから、どの国の法律を適用するかの選択がない場合に、日本で就労するときには、「最密接地法」として日本の法律が適用されるのです。

(3)労災保険法の適用
  労災保険法も適用されますので、外国人留学生が日本の事業場での就労に起因して労災にあい、その結果死傷したり疾病にり患した場合には、日本人労働者の場合と同様、労災保険から、それぞれの給付要件に従って、療養補償給付(労災保険法13条)、休業補償給付(14条)、障害補償給付(労災保険法15条)、死亡した場合の遺族補償給付(労災保険法16条以下)と葬祭料(労災保険法17条)、傷病補償年金(労災保険法12条の8第3項)、介護補償給付(労災保険法19条の2)が支給されます。これらの労災保険給付の金額は、例えば休業補償給付は1日について給付基礎日額(平均賃金相当額のこと。労災保険法8条)の100分の60とか、障害補償給付は1級から7級までの障害については給付基礎日額の313日分から131日分の年金とかというように、法律または規則で定められていますので、その計算に従って給付金額が決定されます。労災保険給付では、その計算に従った金額が支給されます。

(4)損害賠償請求
 労災が発生した場合、労働者が使用者に対して損害賠償請求権を持つことがあります。本件で労災発生の原因として考えられるのは、研削砥石が片減りをしていて破裂しやすい状態であったのにそのまま労働者に使用させたこと、グラインダーの研削砥石の直径が50ミリ以上であるにもかかわらずカバーを設けていなかったこと、研削砥石の最高使用周速度について教育がされていなかったこと、があげられます。
 これらは、安全配慮義務(労契法5条)違反ともして構成することもできますし、不法行為における注意義務違反(民法709条)として構成することもできます。本件では、日本の法律の適用が合意されていると考えられますので、安全配慮義務の規定(労働契約法5条)も適用され、使用者に安全配慮義務違反があった場合の効果を定める民法も適用され、損害賠償責任が使用者に発生することになります(民法415条)。また、損害賠償請求の根拠として、不法行為(民法709条)や不法行為の使用者責任(民法715条)を根拠とした場合であっても、日本で労災事故が発生して傷害を負った本件の場合には、民法709条や715条の不法行為に関する法律が適用されます。不法行為については、「加害行為の結果が発生した地の法による」(通則法17条)となっているからです。被害者に過失のある場合に過失相殺の規定(民法418条、722条2項)が適用もされます。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

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