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「はい」から墜落した年少者

2016.12.31.Sat.11:12
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年10月15日号、「はいから墜落した年少労働者」を取り上げています。事案は、被災者が冷凍庫内で冷凍食品を入れてあるプラスチックコンテナ―が積み上げられたはいのはい付け作業の際に高さ180cmのはいの上から墜落し、尾骨骨折したものです。

この中では
  *労働者死傷病報告
  *「はい」作業について
  *災害時監督
  *是正勧告書
  *年少者の労働基準法等での就業に関する制限
  *年少者と危険有害業務等

等について解説をしてます。

 
 今回は、年少者と危険有害業務等にういての箇所を紹介します。


弁護士


(1)年少者
 本件では17歳の高校生が就労をしています。未成年者であっても、労基法、労働安全衛生法などの労働関係法規が適用されることは当然のことです。15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで、原則として労働者として就労させることはできません(労基法56条1項、例外として同条2項)が、本件では17歳ですのでこの点の問題はありません。
しかし、18歳未満の労働者は、「年少者」として特別の保護や就労の制限があります。これは、年少者の健全な成長と学業との調整を図ったものです。18歳未満の者に過重な労働や危険有害な労働をさせることは、まだ成長過程にある労働者の健康に影響を及ぼすことになるからです。そこで、年少者については、次のような保護や就労の制限があります。
① 変形労働時間制、フレックスタイム、36協定による時間外・休日労働、事業の特殊性による労働時間・休憩の特則(労基法40条)の適用が、原則として排除される(労基法60条)。
② 深夜業が原則として禁止される(労基法61条)。
③ 危険有害業務に就労させるこが禁止される(労基法62条)。

(2)危険有害業務の禁止
 年少者はまだ発育過程にあって、抵抗力が弱く、肉体的・精神的にも未成熟であり、技術的も未熟なことが多いので、危険な業務や有害な業務に就労させることが禁止されています(労基法62条)。18歳未満の労働者の就業が制限される業務としては、労基法62条に規定されている、運転中の機械や動力伝動装置の危険な部分の掃除・注油・検査・修繕、運転中の機械若しくは動力伝動装置へのベルト若しくはロープの取付・取外し、動力によるクレーン運転、重量物の取扱(その内容は年少者労働基準規則7条に規定)、毒劇物等の有害な原料・材料や爆発性や発火性や引火性のある原料・材料を取り扱う業務、安全、衛生または福祉に有害な場所における業務のほか、年少者労働基準規則(以下「年少則」)8条に規定されています。そして、そこには、「37 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務」があります。本件では、17歳の労働者に対して、冷凍庫内で冷凍食品の詰め替え作業や仕分け作業を行わせていたのですから、年少則8条で定める有害作業に該当して、労基法62条に違反します(罰則規定は119条1号)。
  なお、年少者への危険有害業務への就業制限には、深夜業の禁止のような例外や除外規定がありません。従って、これらの業務に従事させた場合には、直ちに労基法62条に違反することになります。
 さらに、はい作業は、技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任して、この作業主任者が作業の直接指揮等を行うべき作業です(労働安全衛生法14条、労働安全衛生規則428条)。作業方法や危険性とその回避方法について専門知識がないと、労働者に危険が及ぶことから、専門の教育を受けた資格者が直接作業を指揮すべきことを定めているのです。作業主任者を置かなかった場合、労働安全衛生法違反となりますが、これによって実際に作業の危険が現実化して事故が生じた場合、事象者の安全配慮義務違反の問題も生じます。労働安全衛生法が上記のようにはい作業について作業主任者を選任すべきとしているのは、はい作業が、そもそも危険な作業だからです。はいが崩れたり作業をしているはいの上から落下する危険のある作業です。年少則では、はい作業に年少労働者を就かせることを禁止する条文はありません。しかし、専門知識がなく技術的に未熟であることの多い年少者をはい作業に就かせること自体が、そもそも問題であるといえます。本件では、はい作業主任者を選任せず、はい作業主任者の直接指揮の下ではなくして、はい作業を行わせたこと、安全に昇降できる昇降装置を設けていないまま、はい作業をさせたこと、年少者に著しく寒冷な場所における業務を行わせていたこと、に安全配慮義務違反があると考えられますが、もし作業主任者が選任されその指揮下ではい作業が行われていたとしても、年少者に、危険な作業であるはい作業を行わせたこと自体が安全配慮義務違反となるとの可能性もあり得るところです。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

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