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サイロで発生した酸欠事故

2016.12.31.Sat.11:24
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年11月15日号、「サイロで発生した酸欠事故」を取り上げています。事案は、被災者が、サイロの上部にあるマンホール蓋を開いて、サイロ内の米国産トウモロコシを目視により点検していたが、トウモロコシの上部が変色していたので、その状態を確かめるため、サイロ内の垂直タラップを降りたところ、酸欠状態の空気を吸い込んだことで酸素欠乏症となりタラップから墜落したというものです。

この中では
  *労働者死傷病報告
  *酸欠とは
  *災害時監督
  *是正勧告書
  *酸欠事故と安全配慮義務
等について解説をしてます。

 
 今回、酸欠の安全配慮義務が問題となった裁判例をいくつか紹介していますが、その中のマルハ事件(山口地下関支平13.4.23)を紹介します。


弁護士


 これまで酸素欠乏症が問題となった判例として、マルハ事件(山口地下関支平13.4.23判例時報1767号125頁)があります。この事件は、甲板手が船舶内のソイルタンク(船舶用汚水処理装置)の修理に際してこのソイルタンクの設置してあるソイルタンク室内に降りたところ、同室内に硫化水素ガスが充満していたかあるいは酸素欠乏のため、硫化水素中毒または酸素欠乏症で死亡した事故について、遺族が船舶所有者に対して損害賠償を請求した事件ですが、裁判所は、A一等航海士(船員労働安全衛生規則2条による甲板部の安全担当者でもある)が被災者にソイルタンクの修理を指示するにあたって、保護具の使用、看視員の配置等の必要、適切な措置を講じなかったことに船員労働安全衛生規則50条2号、5号の違反があると判断しています。そして、船舶所有者が硫化水素発生の危険性について安全担当者に十分な安全教育を施さなかった落ち度があり、船舶所有者の「組織としての落ち度がA一等航海士の無知ないし安全担当者としての不適格性をもたらしたものであって、これらがあいまって被告会社の過失を構成するというべきである。」として、会社自体に不法行為責任があると判断しています。
 この判決では、船舶を所有して営業を行うものには「当該船舶の乗組員につき、その生命、身体の安全を害すべき事故の発生を未然に防止すべき法律上の義務」があり、この義務は「雇用関係の有無にかかわらず、船舶所有者と乗組員との間に当該関係があることに基づいて発生する一般的義務である」とし、故意または過失により船舶所有者がこの義務に違反して違法に乗組員に損害を与えた場合には、船舶所有者は不法行為に基づきその損害を賠償する責任があると判断しています。


紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

「はい」から墜落した年少者

2016.12.31.Sat.11:12
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年10月15日号、「はいから墜落した年少労働者」を取り上げています。事案は、被災者が冷凍庫内で冷凍食品を入れてあるプラスチックコンテナ―が積み上げられたはいのはい付け作業の際に高さ180cmのはいの上から墜落し、尾骨骨折したものです。

この中では
  *労働者死傷病報告
  *「はい」作業について
  *災害時監督
  *是正勧告書
  *年少者の労働基準法等での就業に関する制限
  *年少者と危険有害業務等

等について解説をしてます。

 
 今回は、年少者と危険有害業務等にういての箇所を紹介します。


弁護士


(1)年少者
 本件では17歳の高校生が就労をしています。未成年者であっても、労基法、労働安全衛生法などの労働関係法規が適用されることは当然のことです。15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまで、原則として労働者として就労させることはできません(労基法56条1項、例外として同条2項)が、本件では17歳ですのでこの点の問題はありません。
しかし、18歳未満の労働者は、「年少者」として特別の保護や就労の制限があります。これは、年少者の健全な成長と学業との調整を図ったものです。18歳未満の者に過重な労働や危険有害な労働をさせることは、まだ成長過程にある労働者の健康に影響を及ぼすことになるからです。そこで、年少者については、次のような保護や就労の制限があります。
① 変形労働時間制、フレックスタイム、36協定による時間外・休日労働、事業の特殊性による労働時間・休憩の特則(労基法40条)の適用が、原則として排除される(労基法60条)。
② 深夜業が原則として禁止される(労基法61条)。
③ 危険有害業務に就労させるこが禁止される(労基法62条)。

(2)危険有害業務の禁止
 年少者はまだ発育過程にあって、抵抗力が弱く、肉体的・精神的にも未成熟であり、技術的も未熟なことが多いので、危険な業務や有害な業務に就労させることが禁止されています(労基法62条)。18歳未満の労働者の就業が制限される業務としては、労基法62条に規定されている、運転中の機械や動力伝動装置の危険な部分の掃除・注油・検査・修繕、運転中の機械若しくは動力伝動装置へのベルト若しくはロープの取付・取外し、動力によるクレーン運転、重量物の取扱(その内容は年少者労働基準規則7条に規定)、毒劇物等の有害な原料・材料や爆発性や発火性や引火性のある原料・材料を取り扱う業務、安全、衛生または福祉に有害な場所における業務のほか、年少者労働基準規則(以下「年少則」)8条に規定されています。そして、そこには、「37 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務」があります。本件では、17歳の労働者に対して、冷凍庫内で冷凍食品の詰め替え作業や仕分け作業を行わせていたのですから、年少則8条で定める有害作業に該当して、労基法62条に違反します(罰則規定は119条1号)。
  なお、年少者への危険有害業務への就業制限には、深夜業の禁止のような例外や除外規定がありません。従って、これらの業務に従事させた場合には、直ちに労基法62条に違反することになります。
 さらに、はい作業は、技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任して、この作業主任者が作業の直接指揮等を行うべき作業です(労働安全衛生法14条、労働安全衛生規則428条)。作業方法や危険性とその回避方法について専門知識がないと、労働者に危険が及ぶことから、専門の教育を受けた資格者が直接作業を指揮すべきことを定めているのです。作業主任者を置かなかった場合、労働安全衛生法違反となりますが、これによって実際に作業の危険が現実化して事故が生じた場合、事象者の安全配慮義務違反の問題も生じます。労働安全衛生法が上記のようにはい作業について作業主任者を選任すべきとしているのは、はい作業が、そもそも危険な作業だからです。はいが崩れたり作業をしているはいの上から落下する危険のある作業です。年少則では、はい作業に年少労働者を就かせることを禁止する条文はありません。しかし、専門知識がなく技術的に未熟であることの多い年少者をはい作業に就かせること自体が、そもそも問題であるといえます。本件では、はい作業主任者を選任せず、はい作業主任者の直接指揮の下ではなくして、はい作業を行わせたこと、安全に昇降できる昇降装置を設けていないまま、はい作業をさせたこと、年少者に著しく寒冷な場所における業務を行わせていたこと、に安全配慮義務違反があると考えられますが、もし作業主任者が選任されその指揮下ではい作業が行われていたとしても、年少者に、危険な作業であるはい作業を行わせたこと自体が安全配慮義務違反となるとの可能性もあり得るところです。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

石綿ばく露により中皮腫を発症

2016.12.31.Sat.11:00
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年9月15日号、「石綿ばく露により中皮腫を発症」を取り上げています。事案は以下のとおりである。被災労働者は、解体工事会社に勤務しており、現場の経験も豊富なことから社長を補佐して、現場での技術的な指導をしたり、社員の相談に乗ったりして後見人的役割を果たしてきた。ところが、昨年の年初から咳が止まらなくなり、また、胸が苦しくなり、仕事ができなくなった。次第に症状が悪化するので、病院に行き、診察してもらったところ中皮腫と診断された。病院から、被災者の作業内容から石綿ばく露による中皮腫ということなので、労災になるとのアドバイスを受けた。そこで、労基署に、労災申請したところ、労災と認められた。

この中では
  *労働者死傷病報告
  *石綿について
  *災害時監督
  *是正勧告書
  *石綿則の改正
  *石綿に関する法規制と石綿に関する労災事例
  *国の権限不行使による国家賠償事件

等について解説をしてます。

 
 今回は、この中の国の権限不行使による国家賠償の箇所を紹介します。


弁護士


 アスベストを原因とする中皮腫のり患について、国の権限不行使を理由とする国家賠償請求を求める訴訟で、国の規制権限不行使を違法として国家賠償を認めた判決があります(大阪泉南アスベスト(国家賠償請求)事件、最1小判平26.10.9民集68巻8号799頁、判例時報2241号3頁)。この事件は、アスベスト工場の元労働者(及び死亡した労働者の遺族)が国を相手に国家賠償請求を起こしたものですが、昭和30年9月から昭和32年3月にかけての大規模なけい肺健康診断及び昭和31年から特殊健康診断が実施され、相当数の異常所見者が認められたことから、1958年(昭和33年)に、粉じん作業等に関する通達を出した時点で、旧労基法に基づく省令制定権限を行使して、罰則をもって石綿工場における局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのに、旧特定化学物質障害予防規則で石綿に関する作業についての局所排気装置の設置義務などを定めた1971年(昭和46年)4月まで行使しなかったことが、著しく合理性を欠き違法であると判断されました。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和



 

パワハラでうつ病になった転職社員

2016.12.31.Sat.10:47
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年8月15日号、「パワハラでうつ病になった転職社員」を取り上げていま す。事案は、転職してきた社員が上司のいじめでうつ病になったというものです。この中では
   *パワハラについて
   *「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたこと」により発症する精神障害
  *うつ病発症と労災認定
  *是正労基署の監督指導
  *パワハラと安全配慮義務
等について解説をしてます。

 
 今回、パワハラの事案の損害賠償請求事件の箇所を紹介します。


弁護士


 パワハラで損害賠償責任が認められた判例として、K市水道局事件(横浜地川崎支判平14.6.27労働判例833号61頁、東京高判平15.3.25労働判例849号87頁)があります。この事件は、上司(課長、係長、主任)が、部下をいじめていたという事案で、国家賠償法に基づいてK市に損害賠償責任を認めた事案です。一審判決も控訴審判決も、K市に対する損害賠償請求を認めましたが、7割という大幅な過失相殺(素因減額)がなされています。
   
 最近の事案では、X産業事件(福井地判平26.11.28労働判例1110号34頁)があります。これは、入社1年にも満たない19歳の社員に対し、その仕事上のミスについて、上司が、「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」、「詐欺と同じ、3万円を泥棒したと同じ」、「毎日同じことをいう身にもなれ」、「耳が遠いんじゃないか」「、嘘をつくようなやつに点検を任せられるわけがない」、「嘘を平気でつく、そんな奴会社に要るか」、「会社辞めた方が皆のためになるんじゃないか、やめてもどうせ再就職はできないだろ、自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば、店でも出せば、どうせ働きたくないんだろう」、「死んでしまえばいい」、「辞めればいい」、「今日使った無駄な時間を返してくれ」などと言われ続け、精神障害を発症して自殺したというものです。これについて、裁判所は、「これらの発言は、仕事上のミスに対する叱責の域を超えて、d(注 自殺した労働者)の人格を否定し、威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントと言わざるを得ず、不法行為にあたると認められる。」と判断し、いじめと自殺との因果関係も肯定しました。
 

 紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

研削といしの破裂で被災した外国人留学生

2016.12.31.Sat.10:37
社労士


 連載している労働安全衛生広報の2016年7月15日号、「研削砥石の破裂で被災した外国人留学生」を取り上げています。事案は、被災者が双頭グラインダーを使用して水道用仕切弁の研磨をしていたところ、回転中の研削砥石が破裂し、その破片が被災者の右腕と右手第5指に当たり、右腕と右指第5指を負傷したものです。

この中では
  *災害時監督
  *労働者死傷病報告
  *是正勧告書
  *外国人留学生を雇用する場合の留意点
  *外国人に対する労基法、安衛法、労働契約法などの適用
  *外国人に対する労災保険法の適用
  *損害賠償責任
等について解説をしてます。

 
 今回は、外国人留学生の就労及び労働災害をめぐる問題の部分を紹介します。


弁護士


 (1)外国人留学生の就労
 外国人が日本に留学する場合、日本において本来活動できるのは、大学等で教育を受けることだけです(入管法19条1項、別表第1の四)が、法務大臣の許可を受けた場合にはその資格外の活動ができるという仕組みになっています(入管法19条2項)。従って、留学生が賃金を得て就労する場合(「収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動」となる。入管法19条1項2号にあたる。)には、法務大臣の許可が必要です(入管法19条2項)。この許可は、留学生の本来の目的である教育を受ける「活動の遂行を阻害しない範囲内」で認められますが、留学生の場合には、その趣旨から、1週について28時間以内の就労が認められています(入管法施行規則19条5項1項)。ただし、就労先が風俗営業などは除外されますし、就労が可能な期間は教育期間に在籍中に限られます。この許可は包括的許可ですから、就労先が決まっていなくても、あらかじめ資格外活動許可申請をして許可を受けていれば、就労しようとする都度の個別的申請を必要としません。
 留学生がこの許可を受けないで就労している場合には、不法就労となります。そして、その不法就労の外国人を雇用した使用者は、不法就労助長罪に問われることになります(入管法73条の2第1項1号)。

(2)外国人に対する労基法、安衛法、労働契約法などの適用
 外国人留学生が日本で就労する場合、日本の労基法、労組法、労契法等の労働関係法規が適用されます。たとえ留学生が資格外活動許可を受けていなくても、あるいは資格外活動の要件である1週28時間を超えて就労していたとしても、これらは適用されます。
  刑法では属地主義の原則(刑法1条)がとられており、この原則は他の刑罰法規にも適用されます(刑法8条)。労基法は日本における事業を単位として適用されますので、日本国内の事業であれば、労基法の刑事法としての側面は適用されます。行政取締法としての側面でも同様です。ですから、日本国内に「事業」がある場合には、労基法や労働安全衛生法の刑事罰規定、行政取締規定は適用になります(厚生労働省労働基準局編『平成22年版労働基準法下』1043頁)。安衛法の適用もありますので、外国人留学生が就労する場合であっても、危険防止措置をとることや特別教育の実施は当然のことです。
日本人や日本の法人と外国人との間の民事上の法律関係にどの国の法律が適用されるかを定める法律として、「法の適用に関する通則法」(以下「通則法」)がありますが、そこでは、契約などの法律行為については、どの国の法律を適用するかを当事者が合意によって選択できるという原則があります(通則法7条)。本件では日本の法律の選択があったと考えてよいでしょう。なお、この選択がない場合には、「当該法律行為の当時において当該法律行為に最も密接な関係がある地の法」(「最密接地法」)が適用されます(通則法8条)。労働契約で「最密接地法」と考えられるのは、労務を提供する地の法律です(通則法12条3項)。ですから、どの国の法律を適用するかの選択がない場合に、日本で就労するときには、「最密接地法」として日本の法律が適用されるのです。

(3)労災保険法の適用
  労災保険法も適用されますので、外国人留学生が日本の事業場での就労に起因して労災にあい、その結果死傷したり疾病にり患した場合には、日本人労働者の場合と同様、労災保険から、それぞれの給付要件に従って、療養補償給付(労災保険法13条)、休業補償給付(14条)、障害補償給付(労災保険法15条)、死亡した場合の遺族補償給付(労災保険法16条以下)と葬祭料(労災保険法17条)、傷病補償年金(労災保険法12条の8第3項)、介護補償給付(労災保険法19条の2)が支給されます。これらの労災保険給付の金額は、例えば休業補償給付は1日について給付基礎日額(平均賃金相当額のこと。労災保険法8条)の100分の60とか、障害補償給付は1級から7級までの障害については給付基礎日額の313日分から131日分の年金とかというように、法律または規則で定められていますので、その計算に従って給付金額が決定されます。労災保険給付では、その計算に従った金額が支給されます。

(4)損害賠償請求
 労災が発生した場合、労働者が使用者に対して損害賠償請求権を持つことがあります。本件で労災発生の原因として考えられるのは、研削砥石が片減りをしていて破裂しやすい状態であったのにそのまま労働者に使用させたこと、グラインダーの研削砥石の直径が50ミリ以上であるにもかかわらずカバーを設けていなかったこと、研削砥石の最高使用周速度について教育がされていなかったこと、があげられます。
 これらは、安全配慮義務(労契法5条)違反ともして構成することもできますし、不法行為における注意義務違反(民法709条)として構成することもできます。本件では、日本の法律の適用が合意されていると考えられますので、安全配慮義務の規定(労働契約法5条)も適用され、使用者に安全配慮義務違反があった場合の効果を定める民法も適用され、損害賠償責任が使用者に発生することになります(民法415条)。また、損害賠償請求の根拠として、不法行為(民法709条)や不法行為の使用者責任(民法715条)を根拠とした場合であっても、日本で労災事故が発生して傷害を負った本件の場合には、民法709条や715条の不法行為に関する法律が適用されます。不法行為については、「加害行為の結果が発生した地の法による」(通則法17条)となっているからです。被害者に過失のある場合に過失相殺の規定(民法418条、722条2項)が適用もされます。

紹介
 *社労士  森井博子 元労働基準監督署長
 *弁護士  森井利和

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